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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2025年度 第61回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

思い再燃

福岡市立  多々良中学校2年照井 優人

 ものづくりが好きだ。
 自由研究が夏休みの宿題に出されたのは、僕が小学四年生の、コロナ禍が落ち着き出した頃だった。その時僕は、コロナ禍の影響で家の中で工作することが多かったので、初めての自由研究は、ダンボールでビー玉転がしを作った。散歩の途中に見上げた都市高速をイメージして、「あの道路にビー玉を転がしたら楽しいだろうな。」なんて考えながら、一人で失敗を繰り返し、完成させた。出来栄えは今見るとガタガタだけれど、ゼロから何かを作り出すものづくりの楽しさに初めて気付いたのは、この時だ。
 次の年もダンボールで迷路を作り、その次の年もダンボールで無限に続くエレベーター式のビー玉装置を作り上げた。
 そして、中学生になった僕は満を持して、幼稚園の頃から一番興味のある恐竜をテーマに自由研究を始めた。恐竜の中で最も有名、かつ最強であるティラノサウルスはどのようにして最強の体になり、ティラノサウルスの祖先は具体的にどのような体をしていたかをまとめることにした。図鑑や本を参考にレポートをまとめ、調べたことをもとに六体のティラノサウルスの仲間の模型を布テープを使って作り、大まかな進化の過程を作り上げた。
 そして今年。最後の自由研究。前回を振り返ると、好きな恐竜にしか目が向いていなかったことに気付いた。恐竜の歴史は、約一億六千万年。地球上の生命の歴史は、約四十億年。だから、恐竜が誕生する前の約三十七億七千万年と、恐竜絶滅後の約六千六百万年のことも知りたくなった。そこで、地球上にまだ何もいない時代からの歴史を巻物にまとめ、生物の進化が視覚的にわかるように、代表的な生物の立体模型を作ることにした。昨年の冬から九か月かけて、毎日毎日あきらめず研究し続けた。最終的に巻物は、七メートルを超える長さになった。見る人がわかりやすいように、自分で考えた巻き機に巻物をはめ、右に回せば「生物の進化」、左に回せば「生物の退化」といった工夫を入れてみた。立体模型も、一体一体設計図を描いてから、ダンボールをアートナイフで切り、ボンドでかためて形を作る作業を繰り返し、五十二体の模型を作った。土台は縦横七十五センチメートルの正方形で、そこに作品をつめこんだ。恐竜時代の前後を調べたことで今まで見えていなかった成り立ちなど、新たな発見ができた。でも、これで最後なんだ。自由研究をやっている時は無心でやり続けていたが、出来上がると充実感を感じるとともに、今回で最後という寂しさが胸の中を埋めつくした。
 僕の学校では、夏休みの宿題として自由研究が出されるのは中学二年生までなので、僕の自由研究も終わった。毎朝早起きしてやっていた研究が無くなると、胸にぽっかり穴が空いたみたいだった。
 僕のものづくり人生もここまで。そんな気持ちの中、夏休み明けの九月、修学旅行で大阪・関西万博を訪れた。そこで、僕はある物に目を奪われた。それは世界最大の木造建築物である大屋根リングだ。リングの上に登った時に思わず声が出た。
「すごい。」
大屋根リングが世界中を包み込んで、世界がひとつになった、そんな気がした。
 家に帰ってからも、あの迫力が忘れられなかった。パソコンで改めて大屋根リングについて調べてみると、大屋根リングは、日本の神社・仏閣などの建築に使用されてきた伝統的なぬき接合と、地震に耐えるためのめり込み補強という現代の工法を融合して作られたものだった。他にも基本的な大きさ、形はもちろん、設計者のねらいや感情まで調べた。調べ終え、パソコン画面を閉じた瞬間、勝手に手が動き出すように、真っ白な紙に鉛筆で自分で作る大屋根リングの設計図を描き始めていた。最初はすらすら描けていたが、作成が進んでいくうちに、だんだん大屋根リングの複雑さがわかってきた。ツジツマが合わなくなる。この繰り返しだった。でも、そんなことも楽しかった。結局、設計図を作るだけで二か月。無駄な努力のように思われるかもしれないが、僕は誰が何と言おうと、これが楽しいのだ。実際の大きさの五百分の一のサイズを計算して、材料として家にあった割り箸をかき集めた。まずは割り箸の太さを均等にするために、無心で紙やすりを使って削った。削り終えるのにかかる時間は、一本約二十分。やはりこの時間が楽しい。
 僕は自由研究が終わることで、ものづくりをすることはもう終わったと思い込んでいた。それは間違いだった。修学旅行で見た建築のすばらしさ、日本の技術力を目の当たりにして気付いた。作品展に出さなくても、自分で思いっきりやればいいと。
 今、自分の力で五百分の一スケールの大屋根リングを再現している。何も置いていなかった僕の部屋のテーブルの上には、組み立て途中の工作がある。今まで、僕を夢中にさせてくれ、粘り強く続ける力を教えてくれた自由研究にお礼を言い、これからは型にとらわれず、思いきりものづくりを続けたい。手は痛くなる。指も手の甲も腕も。でも、そんな痛さを忘れるくらいの楽しさがものづくりにはある。
 僕は、ものづくりが好きだ。

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