2025年度 第61回 受賞作品
福岡県教育委員会賞
グラタン対わたし
福岡市立 板付北小学校6年重松 美空
「よし。明日の夜ごはんのグラタン、一緒につくろう。」
母の言葉と共に試合のゴングが鳴り響いた。不器用で料理が苦手な私と、手間がかかるグラタンとの試合だった。「おにぎりもまともにつくれない私につくれるわけない」と思った。
「お母さんも一緒につくってくれるんだよね。」
と、私が母に聞くが、
「お母さんは近くで見て教えてあげるから、一人でつくってみてね。」
と言われ、不安でいっぱいだった。
次の日の夕方、とうとうグラタンをつくる時間になってしまった。母は、グラタンの材料とグラタン皿をキッチンに置いた。しかし、そこにグラタンのもとはなく、どうやら一からつくるようだ。嫌々ながら言われた通りに野菜を切る。その時、グラタンからの奇襲攻撃を受けた。玉ネギだ。玉ネギで目に痛みが走る。痛みで涙があふれてくる。私は早くも、心が折れそうになった。だが、「やられた借りは返さなければ」と思い、玉ネギをバターで炒めて、ブロッコリーを塩茹でしてやった。
そして、次は先に攻撃すべく、すばやくマカロニを茹でた。だが、そう簡単に茹でさせてはくれない。ずっとまぜなければならない。マカロニを均一に美味しくするために。時間がたつとまぜる回数も減った。勝利の女神がほほえんでいる気がした。
次にソースをつくる。この時も油断はできない。さっきつくった野菜と小麦粉、牛乳を加え、フライパンにくっつかないように慎重にまぜる。そして、まぜながら牛乳を入れなければならない。母は、
「少しずつ、時々入れればいいからね。」
と、軽々しく言うが、少しの量も時々のタイミングも、どれくらいかわからない。牛乳は強敵だった。スピードも重要だ。頭をフル回転させて、やっとできた。私は一つの高い壁を乗り越えられた気がした。
いよいよ終盤戦だ。つくったソースをマカロニとまぜてグラタン皿にのせる。そして、ブロッコリーを見栄え良く盛りつける。ミートボールものせ、最後にチーズ。チーズを全体にふりかける。電子レンジで上のチーズが黄金色になるまで調整しながら焼く。いい香りがして、取り出したと同時に、試合終了のゴングが鳴る。勝利をつかみ取ったのは私。試合に勝った私は、
「勝った……つくれた……グラタンを。」
と、思わずつぶやいた。
その夜、グラタンを食べた家族はみんな、
「美味しい。」
「もっと食べたい。」
と、言ってくれた。私もグラタンを口に運ぶ。
「うん……美味しい…!」
おどろいた。外はパリっとしているのに中はトロトロしている。おにぎりもつくれない私がつくったとはとても思えない。苦手で嫌いなはずの料理が、今日は楽しかった。私はグラタンを食べながら何度も言った。
「今度、絶対またつくる。」
それほどに、楽しくて、勝利した味は美味しかったのだ。