2025年度 第61回 受賞作品
福岡県知事賞
伝えたい言葉
私立 明治学園小学校6年能美 にな
小学生として迎える最後のお正月。今年の抱負を考えていた時、ふと思った。もうすぐ小学校生活が終わる。この節目の時、たった一人で私を育ててくれた母に、感謝の気持ちを伝えたい。少し気はずかしい言葉も、手紙でなら伝えられる気がする。そうと決まればさっそく言葉探しだ。
まず初めに浮かんだのは、もちろん「ありがとう」。しかし、母の日や勤労感謝の日にも書いてきた言葉でもあり、特別感はうすい。この手紙の主役に据えるには少し物足りない。
「大好きだよ」もいいかもしれない。愛情を素直に表現できる。でも小学校六年生の私が満を持して書く手紙の言葉にしては、幼い気もする。それに、母は毎日仕事で忙しい中、母自身の自由な時間を私のために使ってくれている。「大好きだよ」という言葉だけでは、私の気持ちの全てを、十分に伝えきれない。愛だけでなく、私のためにしてくれる行動に対しての感謝も伝えたいのだ。
母の右腕には、真新しい大きな茶色の色素沈着がある。一年前にわかった病気の治療でできたものだ。点滴をするたび薬で血管や皮膚が炎症を起こし、ケロイドになってしまったのだ。心配した主治医は、何度も刺さなくて済むよう、鎖骨近くの皮下に埋め込む点滴ポートの設置をすすめた。母は即答した。
「あと数回の治療ですし、私は大丈夫です。それに、娘の寝るときの定位置なので。」
我が家では、母と私は同じ時間にベッドに入るという約束がある。電気を消して眠る前に、お互いの一日の話をするのだ。暗い中でこそ相談できること、話せることもある。不安なことがあると、私は母の布団に潜り込み、鎖骨のあたりに頭を押し付けて眠る。安心してよく眠れるからだ。母の体温と布団に包まれて、私は「ああ、幸せ」、母は「そりゃ結構」と、二人で笑って眠りにつく。特に母の闘病中、私はほとんど毎日このスタイルで眠っていた。治療で母の姿や生活が変わっていく不安の中で、この時間だけはいつもと同じだった。そして私の安心感と引き換えに、母の腕には茶色いケロイドが残った。申し訳ない気持ちが隠せず泣きそうになる私に、母は言う。
「生きるための治療もした。毎日一緒に寝ることもできた。
何一つあきらめないために、頑張った勲章なんだよ、これは。」
そして今日も私を「定位置」で眠らせてくれる。そう、母はいつも、何よりも私の幸せを考えていてくれる。
手紙を書こう。母のすべてに対して、十一年間の感謝と愛を伝えよう。母の愛をうけ育った今の私の、特別ではなく、素直な言葉で。
大好きなお母さん、いつもありがとう。
私は今、とっても幸せだよ。
お母さんの娘で、幸せだよ。