2024年度 第60回 受賞作品
RKB毎日放送賞
海から広がった世界
篠栗町立 篠栗北中学校1年加富礼 秋楽
みなさんは、バラを見たらどう思いますか。「きれいだな」と思う人もいれば、「とげがあって痛そう」と思う人もいるかもしれません。同じバラを見ているのに、感じ方が違うの、面白いと思いませんか? それは、その人の考え方や価値観、これまでの経験が関係しているからだと思います。たとえば、美しさを優先する人にはバラの鮮やかさが魅力的に見えますが、安全を優先する人はとげの危険が気になるかもしれません。同じものを見ても、私たちの心の中にある「何か」が、どう感じるかを決めているのです。
私が「人によって見え方がちがうんだ」ってはっきり気づいたのは、日本に来たときのことです。私はもともと、内陸国の小さな村で育ちました。山々に囲まれ、静かな湖や川が村の一部になっていました。その村では、湖のまわりや川辺が私にとっての「水辺」でした。でも正直、「なんだか世界がせまいな」と感じることもありました。村の外にもっと広い世界があるんじゃないかと思いました。
そんなある日、私の家族が日本に引っ越すことになりました。六歳のときです。 そのとき、人生で初めて「海」というものを見ました。昨日のように覚えているあの日は、七月の下旬、暑い日でした。私は、裸足になり、冷たい砂の上に立ちました。そして、目の前に広がる青い海を見た瞬間、思わず「わあー」と声をあげました。空と海が混ざり合うように広がる水平線、押し寄せる波の音、空を舞うカモメの鳴き声すべてが初めての体験で新しく感動しました。そのとき、「自分が知っている世界って、小さかったんだ」と思いました。
でも、私が驚いたのは海だけではありませんでした。冬になると雪が降り、村では一度も見たことのない雪化粧の風景に心を奪われました。春には桜が満ち咲き、その淡いピンクの花びらが風によって飛ばされた様子は、言葉にできないほど美しかったです。そして街を歩けば自動販売機がたくさん並び、信号が正しく光る姿に驚きました。また、初めて経験した台風は風と雨の力強さにびっくりし、自然の怖さも感じました。これらすべての出来事が、私の「世界」という考えを大きく広げてくれたのです。
それまでは、「目に見えるもの」が私にとってのすべてでした。しかし、日本での経験を通して、「目に見えるものだけが世界のすべてじゃないんだ」ということに気づきました。見えない部分にも、そのものの持つ価値や背景がたくさんあります。それを知ることで、世界はもっと深く、もっと面白くなるんだなと感じるようになりました。
たった七時間の飛行機の旅で、私の世界は大きく変わりました。人生は、約七十九万時間もあるそうです。その中で、一年に一回でも違う国や新しい場所を訪れることで、さらに世界を広げることができると思います。しかし、遠くまで行くことだけが方法ではありません。身近な場所でも、いつもと違うところに行ったり、知らなかったものを見つけたりするだけで、新しい発見はたくさんあり、自分の「世界」を広げることができます。たとえば、隣町に出かけるだけでも知らないお店や風景、新しい文化や習慣に出会うことがあります。それだけで、自分が知っている世界が少し広がるのを感じられるのです。そう考えると、どこに住んでいても、自分の世界を広げる方法はたくさんあるのだと思います。
最近私は、新しいことに挑戦したい気持ちがどんどん強くなって います。たとえば、食べたことのない料理を食べることであったり、今までやったことのない遊びをやってみたり、知らない街を歩いてみたり。それがどんな小さなことでも、初めての体験が私の中に新しい風を吹き込んでくれる気がします。知らなかったことを知る喜びや、見たことのない景色に出会ったときの感動は、いつの間にか私にとって言葉にできないほどのワクワク感を与えてくれます。
「世界ってこんなにも広いんだな」なんて思いながら、今までの価値観や視点が増えていくのが楽しくて仕方がありません。「今」と違う新しいことに挑戦すると、少しだけ勇気が必要なときもあります。しかし、そこで少し勇気を出すことで、その先に広がる景色や発見は、何度経験しても心が浮き立ちます。これからも初めての「海」を忘れずにそんな瞬間をたくさん味わいながら、自分の中の「世界」をもっと広げていきたいです。何気ない日々の中にも、まだまだ知らないことがたくさん眠っていると思うと、毎日が少しだけ特別に感じられるから不思議です。