2024年度 第60回 受賞作品
日本農業新聞賞
農園の仕事から学んだこと
うきは市立 浮羽中学校2年倉富 愛結
私が通っている中学校では、二年生が職場体験に行くことになっている。私は将来、料理人になりたいと考えていた。しかし、決まった職場は観光農園。自分の願いが叶わなかった悲しい気持ちを抱えたまま、観光農園へ事前訪問に行った。 農園に向かう途中の坂、自転車を漕ぐペダルは、まるで私の気持ちを表すかのように重かった。自転車のペダルをやっと漕いで足が疲れた頃、体験する農園に着いた。
「よく来たね。これ、食べなさい。」
と、農園の方に優しく声をかけてもらったことで、心がゆるんだ。そして、ここで作られた梨を口にしたことで、さらに、心がゆるんだ。私が大好きな梨。甘く、果汁がたっぷりでみずみずしく、今まで食べた中で一番おいしかった。「こんなにおいしい梨。どうやったらできるんだろう。」いつの間にか、私の中の悲しい気持ちはなくなり、農園での職場体験が、待ち遠しく思えた。
そして、いよいよ職場体験当日。職場体験の二日間は、あっという間に終わった。体験を終えて帰るあの坂。下り坂だったせいもあるが、ペダルを漕ぐ足取りは軽く、頬に当たる風も気持ちよく、あっという間に家に着いた。それは、私にとって、三つの学びがあったからだと思う。
一つ目は、農業の大変さを知ったこと。私は、主に二つの仕事を体験した。まずは、いちご畑のプランターの洗浄。土の汚れがついた何百個ものプランターがあった。こんなにあるのかと驚きながら、早く終わらせたい一心でプランターを洗った。二時間ほど経った頃、その場にあった何百個もあるプランターが残りわずかになった。「これで、やっと終わる。」と思ったところに、また、たくさんのプランターが追加された。私はいちごも大好き。おいしいいちごが私の口に入るまでには、こんなに大変な作業があることを知った。
次に行ったのは、梨の箱詰め。最初に、段ボールの箱を組み立て、箱の底にビニールテープを貼る。テープを貼るときに空気が入ってしまったり、テープがずれたりして苦戦した。そんな私に、農園の方は、きれいにテープを貼るコツを丁寧に教えてくれた。回数を重ねていくうちにどんどん上達したが、思った以上に大変だった。これら二つの作業から、おいしい果物が私たちの手元にくるまでには、果物の世話や収穫以外の大変な仕事があることを学んだ。
二つ目は、仕事をする上での工夫だ。職場体験では、午前中に屋外でプランターを洗い、午後は室内で梨の箱詰めをした。その日の気温に適した場所で作業を行ったのだ。気温によって作業場所を変えることに驚いた。また、果物を収穫するときに、色が悪くなってしまったり、形や大きさが悪くなったりすると、出荷できないそうだ。でも、この農園では、普通なら捨ててしまうであろう果物をジュースやフルーツのバターに加工して売っていた。実際に、出荷できないシャインマスカットで作ったジュースを飲ませてもらった。飲むと、シャインマスカットの甘さが口いっぱいに広がり、生で食べたときとは違うおいしさを味わうことができた。形を変えて、おいしさを味わうことのできる工夫も学んだ。
三つ目は、働くことで得られる喜びだ。私は、農園の方に、
「仕事をしていて、嬉しかったことは何ですか?」
と尋ねた。すると、
「お客さんから、笑顔で『おいしかったよ。』と言われたときかな。」
と、答えてくださった。ここは、観光農園なので、収穫した果物や加工した物を、お客さんが実際に食べる姿を見ることができた。そして、お客さんのとびきりの笑顔も目にすることができた。そんな笑顔を見ていたら、私まで嬉しくなった。私は、家で料理をすることがあるが、自分が一生懸命に作ったものを家族が、「おいしい」と笑顔で食べてくれると嬉しいし、自分も笑顔になれる。自分が仕事をすることで周りの人が笑顔になる。それが一番のやりがいなんだということを、農園の方とお客さんの姿から学んだ。だから、大変な仕事であってもがんばれるのだろう。
農園の仕事は、私が目指している職業とは違ったが、お客さんを思って、ものを作ったり工夫をしたりしている点では同じだと思う。農園の方が仕事に誇りをもち、喜びを感じながら仕事をしている姿に、学ぶものがたくさんあった。たとえ大変であっても、私もそんな仕事がしたい。私は、本当に料理人になりたいの?どんなことならがんばれる?どんな喜びを感じたい?農園での職場体験は、自分の進路を問い直すきっかけを与えてくれた。もう一度、自分に問いかけながら、今後の進路を考えていきたい。