2024年度 第60回 受賞作品
日本農業新聞賞
冬のお届け物
福岡市立 舞松原小学校6年野口 敬聖
「やっと届いたー。」
寒い外のポストに届いている荷物を取り出す。ウキウキしながら温かい手にもつ封筒を急いで開ける。封筒の表には、いつもこう記されている。「これは、あなたを大切に思っている人からのプレゼントです」
僕には、毎月祖母が頼んでくれている本が一冊届く。それは、僕にとっての新しい世界がたくさんつまっていて、新しい感情を生み出してくれる宝物でもある。
例えば、五年生の夏休みに読んだ「冒険者たち」。 この本を読み終わったとき、友情や仲間との団結力を考えさせられた。友達に自分から話しかけて、一緒に笑い合えるきっかけにもなり、小学校生活最後の一年は、より楽しく友達と笑顔で関わっている時間が増えた。
「おばあちゃん、ねえ、もう一回これ読んで。」
と、 何度もねだっていたころがとてもなつかしい。 僕が三才くらいのころ、 祖母や父によく読み聞かせてもらった本がある。小さな女の子が花や鳥など新しいものと出会い、すてきな時間を過ごす、「いっぽ、にほ……」という大好きな本だ。初めて女の子が見つける黄色の花や、身近なものが輝いて見える女の子、音楽家の男の人と一緒にいるおさるさんのさし絵を見ていると、とても楽しい気持ちになれた。そして、僕は自分が笑顔でいられなくて、楽しい気持ちになりたいときに読んでもらいたいと思っていた。読み聞かせてもらったのは小さいころだったから、そのときの感情は、はっきりとは覚えていない。けれど、何回もくり返し読んでもらいたいほど、三才のころの僕がワクワクする気持ちになった本なのだ。
毎月届く本一冊一冊には、読んでいたころの学校生活の思い出や、その時に感じた気持ちがたくさんつまっている。楽しい学校生活、失敗した理科の実験、話で盛り上がる帰り道、緊張する学習参観、おいしい夜ご飯、そしてなにより、友達と一緒に笑い合った毎日…。読むたびにたくさんの思い出がよみがえる。どれも僕の大切な財産だ。
そんな気持ちにさせてくれる本を届けてくれるやさしい祖母。いつも、畑で育てた野菜を送ってくれたり、祖母の家にとまりに行ったときは、料理をつくってくれたり、勉強を教えてくれたりする。そんな風に、僕たち家族をいつも遠くから支えてくれている。だから、毎回本をもらって読むたびに祖母に感謝したくなる。僕が生後六ケ月のときから届け続けてくれている本。「色々な知識を得て、心豊かな人に育っていってほしい。」「本を通して、親子とのつながり、祖父母とのつながりを大切にしてほしい。」という願いをこめて送り続けてくれていると聞いた。僕も祖母のように周りの人とのつながりを大切にできる、心やさしい人になりたいと思う。
「おばあちゃん、いつも本をありがとう。」