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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2016年度 第52回 受賞作品

西日本新聞社賞

「創意工夫の父」

福岡市  別府小学校6年古谷 櫂

 お母さんがいない時や風邪をひいたときは、お父さんの出番だ。冷蔵庫の中の少しの残り物と、これまた少しばかりの新しい具材を組み合わせて、あっという間にご飯を作り上げる。

 今日は頭が痛いお母さんの代わりに、お父さんが新作どんぶりを作ってくれた。「新作」というと定番があるかのようだが、毎回が違う「新作」なのだ。その日のお父さんの気分と残り物によって作る物は変わる。だから、ぼくが美味しいと言うと、「二度と同じ物は食べられないからね、心して食べなさい。」と笑いながら言う。ちなみに、今日の「新作」はシーフードミックス、シイタケ、ネギ、鮭、小松菜を卵でとじたどんぶり。シーフードミックスを卵でとじるのが新鮮だったが、出汁が効いていておいしい。以前、ひじきの五目煮をパスタに入れたこともあった。首を傾げる組み合わせだが、見かけによらずマッチしていた。めんと大豆がからまずに食べにくかったことが残念だったが。

 お父さんの料理の特ちょうは意外性だ。それは一から材料を買ってきてレシピ通りに作るわけではなく、その場にある物の中から美味しく食べられて、残り物も減る組み合わせを考えるからだ。それが食べる人にとっては意外な組み合わせに見えるのだ。お父さんは意外性のある食べ物を目指しているわけではない。ただ、残り物を温め直して「残り物」として食べるよりも、それを使って新しい食べ物にして食べたいそうだ。

 その姿勢はいつも変わらない。ぼくが小さい頃に使っていたままごとセットのガスコンロは、プリンを固定するための丸い穴の開いた空き箱に、つまようじでつまみを付けたものだった。持っていた木製フライパンにぴったりのサイズだったのだ。もちろんこれもお父さんのお手製だ。お父さんは何かの目的に見合う材料を探して作るわけではなく、材料を見て「これとこれを使えばあれができるじゃないか。」と思いつくのだという。つまり廃物利用を目的として物を作るのでもなく、作るためにわざわざ材料をそろえるわけでもない。たまたまその場にあった物の組み合わせで柔軟に新しいものを生み出しているのだ。

 それこそが創意工夫だと思う。ぼくは生きていく上で、これはとても大切なことだと考える。「こうでないとあれができない。」といった固定観念からは何も生まれないし、手持ちの物を意味ある新しいものに変えていくのは、未来を創造することだと思うからだ。

 臨機応変で柔軟な発想ができるようになるのは難しい。でも、工夫のある人生は楽しいだろうし、柔軟な世の中の方が誰にとってもいいだろう。だからこそぼくは、いつも工夫する人でありたいと思っている

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