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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2016年度 第52回 受賞作品

西日本新聞社賞

博多の正月の風習

福岡市  名島小学校5年藤野 莉汰

 みなさんは、「栗配箸」というものを知っていますか。栗配箸とは、正月の初めの雑煮を食べる箸のことで、行事の繰り回しがうまくいくようにという意味が込められているそうです。博多弁では、「まんぐりがよかこと」と言うそうです。しかし、今、博多でも栗配箸を使う人がだんだん少なくなっているそうです。そこで私は栗配箸作りにちょう戦することにしました。

 おじいちゃんにさそわれて、私は栗配箸作りに取り組みました。私の家の栗配箸は、もともと、死んだひいおじいちゃんが作っていて、その後にひいおばあちゃん、その後をついでおじいちゃんが作り続けているそうです。私は、刃が少しさびた大きなカッターで、おじいちゃんの言う通りに栗の木をけずりました。すうっと、なめらかに木の皮がむけて、手にぐっと力が入りました。けれど、一つだけむずかしいところがありました。それは、生えていた枝を切った後の部分をけずることです。その部分はとても固くて、きれいにけずりとることがむずかしかったです。

 そして、私は家族六人分と、いとこ四人分と、もち用の箸の合計で十一本の箸を二日間で作り上げました。

 一月一日、元旦。家族六人でお母さんとおばあちゃんが作ったおせち料理とお雑煮を食べました。毎年食べるおせちとお雑煮は、今年もとてもおいしかったです。でも、おじいちゃんが作った栗配箸で食べるお雑煮より、自分で作った栗配箸で食べた方が何だかとてもおいしく感じられました。

 すると、私の前にすわっていたひいおばあちゃんが、私の作った箸を見ながら、

「これ、義数(おじいちゃん)がこしらえたとね。」

と、おじいちゃんに聞いていました。そういえば、ひいおばあちゃんに、自分が作ったことを言うのを忘れていました。

「莉汰が作ったんですよ。」

と耳が聞こえにくいひいおばあちゃんに、声を少し大きくしておばあちゃんが言いました。

「ああ、莉汰が作ったとね。」

そう言われて、私はうれしくなって笑顔でうなずきました。

「そうね、そうね。上手になったねぇ。」

そう言われて、おせちに夢中だった私の心がキラキラとかがやいた気がしました。

「もう、世代交代だね、莉汰。」

おじいちゃんに言われました。

「うん。いいよ。」

私は答えました。

 いつまで続けられるかは分からないけれど、これからもちょう戦していきたいと思います。そして、これからもこの博多のまちの伝統にたくさんふれて、受けついでいきたいと思います。

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