2024年度 第60回 受賞作品
福岡県教育委員会賞
病気が教えてくれたこと
国立大学法人 福岡教育大学附属福岡小学校3年古巣 大晴
ポトン。ポトン。
ベッドの上で、ぼんやり点てきを見つめる。ぼくは、ようれんきんに感せんした。体も弱り、だっ水しょうのしんだんがおりた。はじめての入院。
「だれか、一しょにとまるけんね。」
母はそう言うと、ふ安な顔で天じょうを見つめていたぼくの手をにぎる。だれか……ってことは、母ではないんだなとしょんぼりする。そのうち点てきが終わると、かんごしさんが言っていたとおり、ずい分体が楽になった。テレビを見る元気も出てきた。持ちこんだパソコンで動画を見ることもできる。今日は、かわりばんこなし。ぼくがひとりじめ。
「もう大じょうぶやね。」
外が暗くなると、母は少しずつベッドまわりをかたづけ始めた。兄と妹のお世話のため、父と交代すると言う。荷物をまとめる母にどうでもいいしつ問をくり返す。少しでも長く引きとめる作せんだ。しかし、父がとう着すると母は急いで帰ってしまった。そしていよいよ消とうというとき、父が、
「大晴、電話してみようか?このボタンをおしたら、家が見えるぞ。」
と、スマートフォンをさし出した。小まどから見えるいつもの風けい。兄と妹がおし合いながらぼくに手をふる。さっきまでここにいた母も、今は画面の向こうにいる。電話を切るとぼくは急にさみしくなった。ふとんにもぐってなみだをこらえる。テレビもパソコンも、もういい。早くおうちに帰りたい。
新がたコロナウィルスが流行ったとき、そして日本の色んな場所で大きなさいがいが起きたとき、ぼくはニュースで「当たり前の日じょう」という言葉を何度も聞いた。でも、その意味を分からずにいた。ぼくの体調が悪いとき、一しょにいてくれる家ぞくがいる。帰りを待つ家ぞくもいる。毎日学校へ行き、友だちと元気一ぱい遊ぶこと、おうちでごはんをもりもり食べること、兄や妹とけんかしたり、大声でわらうこと。それは決して当たり前ではない。
けんこうに気をつけて、一日一日を大事にすごそう。