ホーム > 小・中学生作文コンクール > 全共連福岡県本部運営委員会会長賞 > 「第一次産業」を継ぐ

「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2023年度 第59回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

「第一次産業」を継ぐ

福津市立  福間中学校3年椛村 彩葉

 みなさんは、「福津」と聞くと、何を思い浮かべるだろうか。海産物や福間海岸、宮地山や飯盛山などの山岳、津屋崎山笠、宮地嶽神社にイオンモールと挙げだしたらきりがない。福津のよいところは、まさに「それ」なのだ。
 福津には、買い物に困らない利便性もあれば、津屋崎千軒やモマ笛などの伝統的な文化もあり、自然豊かなところも残っている。これはすごいことだと、私は思う。他の市や県が人口減少の一途をたどる一方で、福津が大きく人口を増やし、子育て世代に人気の「住みたい街ランキング」で一位を獲得することもうなずける話である。
 このように、たくさんの魅力と誇りのある、私たちのまち、福津。私たちはこの「誇り」を未来へ伝えていかなければならないのだ。そのためには、福津の現在と未来を、鮮明に思い描く必要がある。
 現在の福津は、美しい自然を残しながらも、商業面での発達も盛んである。言うなれば、「いいとこどり」をしているのだ。街というものは、自然環境の保全か、商業の発達かのどちらか一方を優遇することによって、その方向性が大きく変わってしまう。だが、福津はそうではない。
 私が通っている福間中学校では、各学年、年に一度松林清掃を行う。そのときに、松林があることで、潮風から建物が守られ、安全な暮らしができていることも学習する。ただ自然を大切にするのではなく、なぜ自然が大切なのかを考える。その土台がここで作られるのだ。これは、産業にもつながっている。自然を大切にするからこそ第一次産業が栄え、人々の暮らしに力を入れるからこそ第三次産業が盛んになる。そのうえ、互いに反発するのではなく、自然を生かした観光向けの体験も展開している。「いいとこどり」で自然を第三次産業として生かす強みももっているのだ。
 しかし、漁師や農家などの「第一次産業」に関わる職業への就職率は全国的に芳しくなく、福津でもマイノリティーの職業であるといえる。時代は、第三次産業への就職が活発になっているように思えるが、もう一度見つめ直してほしい。第一次産業の担い手がいるからこそ、経済は回り、現在の福津があるのではないだろうか。福津の未来を見据えると、代々の職業を継ぐ大切さを考えさせられる。
 現に、私の実家は葡萄農家を営んでいるが、父は三代目であり、曽祖父から代々受け継いでいる。父が経営するなかで、前例に倣う手法や習慣、昔から作られている葡萄の他に、駐車場や畑を拡大したり、この土地に合う品種の育成に取り組んだり、新しい試みも行っている。以前は直売で、並べていてもなかなかお客さんが来ず暇を持て余していたのだが、SNSを活用して宣伝することで、今ではありがたいことに予約も多く入るようになった。他にも、積極的に新しい品種を育てることに挑戦しており、私が幼い頃好んでいたものは残念ながら、うちの土地ではB級品にしかならないため育てられなくなった。好みに左右されるのではなく、この土地に合うものが何なのか試行錯誤することが、伝統を守り、引き継ぐことにつながると強く思った。
 また私は、学校のコミュニティ・スクール行事の一環である未来会議で、産業のグループに参加した。そこで、自然を生かした農業が発展すると、よりよい福津になると考え、規格外商品に焦点をあてた、フードドライブを提案した。フードドライブとは、家庭で余った食べ物を学校や職場などに持ち寄り、それらを地域の福祉団体や施設、そして、規格外商品を配給する団体のフードバンクに寄付する活動のことだ。ふれあい広場やあんずの里など身近な場所でも行える活動であり、私たち自身も購入者として携わることができる。福津の農業を活性化するために、食品ロスを減らしたり、地産地消を積極的に行ったりすることは、若い人が農業に興味をもつきっかけにもなる。
 福津にはいいところが多く存在する。しかし、その担い手は私たちが思うよりも少なく、真剣に向き合うべき課題である。福津のいいところを未来につなげるように、各々が「第一次産業」を継ぐ必要がある。それにはいろいろなやり方があることを、私たちは知るべきだ。「第一次産業」を継ぐのは、限られた一握りの人間ではなく、私たち自身なのだ。

ページ上へ