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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2023年度 第59回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

年賀俳句

福岡市立  勝馬小学校6年福山 瑶

 お正月の朝、祖母から葉書が届いた。軽くジャンプをしながら葉書を読む。そこには、あけましておめでとうのあいさつと、俳句が一つ書かれてあった。
 うっすらと 積もる初雪 そっと踏む
 読んだ瞬間に思い浮かんだのは、祖父母の家の庭にうっすらと積もる真っ白な雪の景色だ。その光景はとても静かできれいだ。きっと祖母は、その景色が夢のように儚く美しく、できることなら残しておきたい、そんな風に思って俳句にしたんだろう。その後、すぐに祖母に電話した。
「ばあば、俳句読んだよ。すごく素敵だった。きれいな景色が思い浮かんだよ。」
俳句の感想を伝えると祖母は声を明るくして、
「ようちゃんもできるよ。今度作ってみて。」
と言った。電話が終わると母が
「俳句を書いて送ったら?きっと喜ぶよ。」
と言ったので母の提案に乗ることにした。
 でも、なんのことを俳句にしよう。なかなか決まらない。たくさんの冬のもの、楽しかったことをあげてみる。寝正月、おせち、おぞうに、かに、お肉……。いや、なんかちがう。ピンとくるものが見つからない。もう一度、祖母の俳句を読み返した。
「あっ。見つかった!」
私も祖母みたいに、キレイなキレイな冬の景色を俳句にしたい!そう思った。キレイな景色かあ……。
「なんか冬ってキラキラしてるよね。」
とつぶやくと、母は手をたたきながら言った。
「いいじゃん!それ入れなよ!」
そうしよう。キラキラをきらめくにしようかな。なにがきらめいているのかな。草木にしよう。冬の朝も入れたいな。どんどん言葉が思いついていく。でも最初の五文字に迷ってしまう。ぐるぐるぐる……。そんな私に母は声をかけてくれた。
「寒い朝にどうしてる?よく息をハァーってするよね。白い息でもいいんじゃない?」
なるほど、息か。白い息……、息はいて……、深呼吸……。これだ!一番ピンときた!もう一度作った俳句を読んでみる。うん!いい……。我ながら素晴らしい。一人ドヤ顔でふふっと笑った。
 年賀状にていねいにゆっくりと、気持ちをこめて書いた。
書き初めならぬ、詠み初めだ。祖母には敵わないけれど、納得できる俳句ができてとても満足だ。
 ことんっ。
次の日の朝、郵便局に行き、真っ赤なポストの口にそっと祖父母あての葉書を入れた。
 深呼吸 草木がきらめく 冬の朝
とてもとてもキレイな冬の景色が祖父母にも伝わるといいな。年賀状が早く届くといいな。軽くスキップしながら、鼻歌まじりで家に帰った。

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