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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2023年度 第59回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

五十四センチのお守り

私立  明治学園小学校4年能美 にな

 五十四センチメートル。
 長さをそろえるてい度の散ぱつしかしたことがない私のかみは、おへその近くまで長く長く伸びている。それを母が毎朝みつあみにしてくれる。私が朝食をとっているとき母が私の後ろに立ち、くしを使ってしん重に分け目を付けていく。真ん中よりも少しだけ右にずれたつむじのせいで、何度もやり直しをすることもある。左右に分けたらあんでいく。前がみも顔にかからないように、引っぱりながらあむ。このときは私も要注意。引っぱる力が強いので、牛にゅうやおみそしるなどの『しるもの』を飲んでいると、こぼしてしまうのだ。最近は母が手をゆるめるタイミングを見計らい、すばやく牛にゅうを飲んでいる。朝から息のあった共同作業だ。あみ終わると母は私の正面に回りこみ、じっと私を見つめて「よし。」と満足気に台所へもどっていく。
 実は休日げん定で、私もみつあみの練習をしている。練習台は母だ。まだまだ初心者なので、左右に分け目をつけることすらむずかしい。あんでいても、たるんでモワモワになってしまう。完成後、母はなかなか『芸術的』なすがたになってしまう。自どりをしながら「先週よりも近未来的」などと感想を言った後、母は鏡の前で私のかみをいつも通りにあんでくれる。みるみる完成していくので、まるでま法のようだといつも思う。母が作る私のみつあみの形は毎回同じだ。早起きの日もねぼうした日も、親子げんかをしたそのよく日も。朝には全てをリセットしていつも通りの「わたし」ができあがる。
 かみの毛は、一ヵ月に約一センチメートルのびるという。つまり私の五十四センチメートルのかみの毛は、小学校入学時からずっと毎朝母があんでくれているものなのだ。四年前には細くて短かったみつあみは今や長くなり、ちょっとやそっとではほどけないほど太くしっかりとしている。母と私の四年間がかたくあみこまれた、私のみつあみ。どんな日にもくずれない、私の大切なお守り。
 今日も私は学校に向かう。お気に入りの、長い長いみつあみと一しょに。

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