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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2022年度 第58回 受賞作品

日本農業新聞賞

ティンパニとの出会い

私立  福岡雙葉小学校5年田中 心望

「次は、五年生によるハレルヤ合奏です。」
 アナウンスとともに幕が上がり、客席にいる人たちが見えてくると、自然と背筋が伸び全身の力がうでに集中していくのを感じた。
 三年ぶりのクリスマスお祝い会。今回は絶対に何かに挑戦しようと決めていた。
「ティンパニ。」
 私はオーディションぼ集でその名前が発表されるとサッと手を挙げた。初めて知った楽器だったが、可愛い名前が気になった。数日後の音楽の時間、目の前に現れたのは、まるで大きなおなべに足が三本はえたような変わった見た目の楽器だった。音はどんなかんじなのだろうとたたいてみると
「ドーン。」
 音楽室にひびきわたった後もまだゆっくりと残る低い音が心地よく感じた。「私、ティンパニの奏者になりたい。」と強く思った。
 それからは毎日昼休みに音楽室に行って練習をした。友達と遊ぶ時間は減ってつらかったけど、ティンパニと会えるのが楽しくなっていった。
「ティンパニさん、もっと強く大きく!」
 本番まであと少し。リハーサルでは、先生達の指導にも熱が入る。練習とはちがって合奏になると、はく力のある音が出せない。家に帰って半泣きしながらお母さんに話したら
「ティンパニのことをもっと知りたいなって思いながらたたいてみたら?」
そう笑顔で言われた。最後のリハーサルの日は、ティンパニとかけ声をかけ合うようにたたいてみた。すると先生やみんなからとても上達したとほめられた。一気に自信がわいてきた。そして本番当日「さぁ、いよいよだ。いくぞ。」バチをにぎりしめ、思いっきり力をこめてたたいた。
「ドンドカンカン。」
「え?なんで?音の高さがいつもとちがう。」
あせりで一しゅん頭が真っ白になった。急いで足下にあるペダルをふんでキーを合わせようとしたけど無理だった。それでもとにかく練習を思い出して全力でたたいた。モヤモヤした気持ちで校門を出るとお母さんが待っていてくれた。
「がんばったね。感動したよ。」
 その言葉を聞いて私は強く言い返した。
「音、ずれてたでしょ!全然最高の演奏じゃなかった。あれだけ練習したのに。」
するとお母さんは私をぎゅっとだきしめて言った。
「最高の演奏って完ぺきに出来ることなのかな。」
私はハッとした。初めてティンパニ奏者にちょう戦したこと、たくさんなやみながらティンパニと向き合って練習したこと、上手くいかずに落ち込んだ時に友達や先生、お母さん、たくさんの人達が応えんしてくれたこと、完ぺきじゃなくても、最高だなと思えた。
「ここちゃん、またリズムとってるね。」
お母さんに私はこう答えた。
「だってティンパニって最高!またたたきたいな。」

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