2022年度 第58回 受賞作品
日本農業新聞賞
はじめてのもちつき
上毛町立 友枝小学校3年前田 悠貴
「イチ、ニッ、サン。」
リズムのよいかけ声がひびき、きねが石うすのもちをおどらせていく。ふっくらとむらされたもち米は、きねでつくたびに、白いゆ気を出し、真っ白でツヤツヤのもちになっていく。
年末、ぼくと妹と母は、地いきのもちつきにさんかした。きねとうすを使うもちつきは、初めてだ。三十うすほどのもちをつくために、いろいろな係の人がいた。火の係は、三つのかまに、セイロを三つずつのせて、もち米のむし上がり時間を調整していた。セイロから立ち上るゆ気が、ユラユラと空高くまい上がり、ぼくの心も期待でワクワクしてきた。
つきあがったもちは、石うすから引き上げるのだが、石うすの中でクネクネとして、なかなか持ち上がらない。友だちのお父さんが、あつさとたたかいながら、まん丸の形で、こなをしきつめた作業台に運んできた。ぼくは、おもちを両手でつつんだ。やわらかくて、心まであたたかくなった。ぼくは、次から次へとちぎられたもちをやさしくもんでいった。
「次は、子どもたちの番だよ。」
いよいよ、ぼくたちの出番だ。大人のようにテンポよくつけるのかと思っていたら、きねは重く、ふり上げるのに力がいる。
「イチ、ニッ、サン。」
とじゅん番に声を出すと、リズムができ、きねがもちの中にすいこまれていく。ぼくたちがついたもちは、全体の昼食で、きなこもちや、すもち、あんこもちになった。きなこもちを食べると、やわらかく、木のかおりがして、もちのあまさが口いっぱいに広がった。
「子どものついたもちは、よくのびておいしい。」
と、みんながよろこんでくれた。
地いきの人とのもちつきは、教えてもらうことがたくさんあり、とても楽しかった。ぼくはこの一年、もちのようにねばり強く、いろいろなことにチャレンジしていきたいと思う。