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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2022年度 第58回 受賞作品

日本農業新聞賞

世界を変えた小さな命

福岡市立  千早小学校4年安田 恵真

 だきかかえると、ふにゃっとつぶれてしまいそうなほど小さく、ふわふわで真っ黒なその子は、一年前、わたしの家にやってきた。名前はベリー。トイプードルの女の子。わが家に初めて連れて帰る車の中で、これからどんな毎日が待っているのだろうと考えるだけで心に羽がはえたようだった。でも、この小さな命を守っていかなければという不安ときんちょうで心の羽はすぐに重たくなった。お父さんとお母さんも同じ気持ちだったのかもしれない。車の中はいつもよりも静かで、ゴトンと車がゆれるたびに、ベリーが入っているカゴの中をのぞいては、「だいじょうぶ?」と声をかけた。ベリーは大きな目で不安そうにこちらを見つめ返してきた。
 あれから一年。すっかり家族の一員となったベリーは、家族中を笑わせてくれる。体重は二倍以上になり、わたしにだっこされてばかりだった散歩は、自分の足でどんどん歩いてわたしをひっぱるようになった。
 ベリーの成長とともに、わたしにも出来ることがふえた。お風ろに一人で入れるようになったし、一人でお使いに行けるようになった。そんな事と思われるような事だけど、わたしにとってはとてもむずかしいことだったのだ。
 ベリーを大切にしてくれる人もふえた。じいじ、ばあば、いとこ達、わたしの友達、動物病院のお医者さん、トリマーさん。もっといるかもしれない。
 ベリーは、わたしの世界を変えてくれた。たった一年で。ベリーがいると出かける場所も時間もかぎられることが多いのに、わたしの世界は広がった。この小さな命がくれた大きな力で、わたしは次に何ができるようになるんだろう。ベリーにたくさん見せてあげなきゃ、新しいわたしを。わたしの何倍ものスピードで、ベリーは年をとってしまうから。

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