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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2022年度 第58回 受賞作品

西日本新聞社賞

伝える大切さ

福岡市立  箱崎小学校4年渡邉 咲空

「ごちそう様でした。」
弟が元気よく、大きな声ではっきりと言った。家族と食事に出かけた時、食べ終えたお皿を下げてくれた店員さんに向かって。店員さんは笑顔で言った。
「お利口さんですね。」
弟の一言で、みな笑顔になる。私は、弟はえらいなと思うと同時にうらやましく感じた。「ごちそう様でした。」や「ありがとう。」と自然に言える弟とちがい、私は返事やあいさつをする事がとても苦手なのだ。
「ちゃんと返事をしなさい。」
父も母も私によくこう言う。だけど、この「ちゃんと」の意味が私には分からない。私が口に出そうとする言葉が正しいのか自信がないのだ。家族や友達には言える事も、あまりよく知らない人に対しては特に言葉が出ない。それが原因で、美よう室でかみを短く切られすぎてしまった経験がある。その時、自分の希望を言葉でしっかりと伝えなかった事を心の底から後かいした。毎日毎日。かがみを見る度に。
 クリスマスに、祖母があみ物の道具をプレゼントしてくれた。一目一目あみ進めて形作るあみ物に私は夢中になった。もし一目とばしてしまったとしても、その目の所までほどいてもう一度あみ直せばいい。自分が思いえがく作品が完成した時は本当にうれしい。はっとした。美よう室での出来事は、一目とばしたあみ物と同じだ。
「この長さがいいです。」
と伝えていれば、きっと後かいしなくてすんだ。
 私はやっと理かいした。「ちゃんと」とは、私の考えが相手に正しく伝わるようにという意味だ。言葉がふさわしくない時やタイミングをまちがえてしまった時は、あみ物のようにやり直すど力をすればいいのだ。きっと相手に伝わるはずだ。
 一目ずつあむように、私も一歩ずつ一歩ずつ思いえがく「私自身」に近づいていこう。
「ごちそう様でした。」
たった一言でみなを笑顔にした弟のように、私もみなの笑顔をふやせる人になりたい。今度私も言ってみよう。

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