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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2022年度 第58回 受賞作品

西日本新聞社賞

母と歩く道

国立大学法人  福岡教育大学附属福岡小学校3年古巣 雄大

 ぼくは、電車と地下鉄に乗って小学校に通っている。三年前、新型コロナウイルスのえいきょうで入学式が二か月近くのびた。その間、ぼくは毎日、母と一しょに、通学の練習をした。
 まず、もよりの駅まで歩く練習。母は、しん号を待つ間もだまることはない。
「少し下がって待とうね。」
「すわりこまないよ、あぶないけん。」
「もうすぐ青よ。左右よく見て。」
と、次から次に思いつくことを口にする。
「もう、分かっとうって。」
ぼくは、うるさいなぁ……と思いながらてき当に返事をした。でも、母はこりずに電車や地下鉄の中でもぼくに注意し続けた。そのおかげか、入学式をむかえるころには、母の言いそうなことがせりふのようにうかぶようになった。
 三年生になり、今度は弟と一しょに登校することになった。あぁ……、またうるさい人がついて来る。そう思っていたが、はつ登校の日、
「じゃあ、ゆう大、たのんだよ。」
そう言って、母はぼくたちを送り出した。駅に向かうと中、弟がふ安にならないように楽しい話をしようと決めていた。でも、一人歩きになれていない弟は、後ろ向きに歩いて、話にむ中になる。
「前向いて歩かんと、人にぶつかるよ。」今までじゅ文のように耳にした言葉が自ぜんと口から出る。ぼくもこんな感じだったのかな。母の気持ちが少しだけ分かる気がした。
「どうやった?あぶない所なかった?」
家に帰ると、母は真っ先にそう聞いた。
「大じょう夫にきまっとろ。」
ぼくはそっ気なく答える。
「へぇー、すごいやん。」
の一言を皮切りに、横だん歩道は上手にわたれたか、道で転ばなかったか、おしゃべりにむ中にならなかったか……。いつものしつ問ぜめは続く。
 でも、ぼくは知っている。ぼくたちの後ろを母がび行していたことを。

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