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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2022年度 第58回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

天国からのハガキ

私立  福岡雙葉小学校4年坂本 美玲

 『……お花で飾られたかわいい写真立てはとても気に入ってます。落ちつきましたら遊びにいらして下さい……』
 昨年ひいおばあちゃんが亡くなり、荷物整理を手伝っていた時に一枚のハガキを見つけた。お見舞い品のお礼状の様だった。絵心のあったおばあちゃんらしく、文章の横には優しい目の犬が描かれていた。亡くなる前に病室で書いたそうだが宛先は未記入だった。
 ひいおばあちゃんは、骨折で入院中に持病が悪化し、新型コロナウイルスで会えないまま天国へ行った。私は、初ひ孫でとても大事にされた。おばあちゃんは、昔からたくさんの友達がいて、このハガキからは、退院後は以前の様な楽しい日々を送りたいという前向きさが伝わってきてさみしくなった。このハガキは誰に届くはずだったのだろう……。可愛がってくれたおばあちゃんに、ありがとうと言えなかった後悔から、私が代わりにこのハガキを届けてあげたい、という気持ちが大きくなっていった。
 おばにきくと、おばあちゃんは手紙に、相手の大切な物や好きな物を描く、オシャレな人だったそうだ。私は「きっと相手はハガキの犬を飼っている人だろう。」と思った。珍しい犬だったので調べてみると“キャバリア”という犬種の様だった。しかし、誰がこの犬を飼っているのかはわからず、私はおばあちゃんがとってあった何百枚もの年賀状から探してみる事にした。ひょっとしたら愛犬と写った写真がのってあるかもしれないからだ。何時間もかけて一枚一枚目を通し、やっとあの犬と写っている年賀状にたどりついた。
 私は母に頼んでその人と連絡をとってもらった。確かに写真立てを送ったそうだ。母と電話を代わってもらい、私はこのハガキをお届けしたいと思っていると伝えた。すると、
「天国からのハガキが届くね。」
と、その人は泣いている様だった。
 私は胸が熱くなった。手紙の温かさを知った。時を経ても、本人がいなくても、心をつないでくれる力を持つ。私は電話を切った後、すぐに誰かに手紙を書きたくなった。

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