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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2021年度 第57回 受賞作品

日本農業新聞賞

青虫とすずめ

宇美町立  原田小学校6年南里 美穂

「あの時のちょうちょだ。」
私が育てていたラディッシュの周りを、数日前に、ちょうちょがひらひらと飛んでいたのを、私は思い出した。
 野菜の先生に教えてもらって、私はラディッシュ作りに挑戦した。種や肥料にこだわって、ふかふかにほぐした土に種を植えた。おいしいラディッシュが実るように、楽しみにして育てていた。
 ようやく目が出て、葉がしげってきたある日、葉がほとんど食べつくされているのに気がついた。代わりに十数匹の青虫がいて、少しだけ残った葉を、ムシャムシャ食べていた。
 あの時飛んでいたちょうちょが卵を生み、その卵がふ化して生まれた青虫が、私の大切なラディッシュの葉を食べてしまったのだ。なんてひどい青虫だと、私は腹が立った。
 そんな時、庭のはしから、
「ちょっと来て来て!」
と父が呼ぶ声がした。私は青虫への怒りがおさまらないまま、父が呼ぶ方へ行った。
 そこには、小さなすずめがいた。小さな体をブルブルさせながら、小さな足でフェンスにしがみついていた。頭の毛はポソポソしていて、大きな目をしたすずめだった。
「ピーッ、ピーッ。」
と大きな声で泣く度に、体がふるえている。
「お母さんと、はぐれてしまったのかな。」私は、この赤ちゃんすずめが迷子になってしまったのかと思うと、自分のことのように想像して、涙が出そうになった。
 空を見上げても、近くにお母さんすずめがいる気配はない。その代わり、近くを飛ぶからすや、ウロウロしているねこに、このすずめが食べられてしまわないか心配になった。すずめは不安そうにずっと鳴いている。のどもかわいておなかも空いているかもしれない。
 このかわそうなすずめに何かをしてあげたいと考えていると、いつも庭にくるすずめたちが、しばふの中の虫をついばんでいるのを思い出した。
「そうだ!あの青虫をたべさせよう。」
と思いついた。さっそく木の枝で青虫をすくいとるようにして、青虫をつかまえた。
 すると青虫は、ぐにゃりと体を曲げた。私は、ドキドキした。
「生きている!」
 この時、初めて青虫の命の音が、枝から私の指に伝わってきた気がした。この青虫も私がかわいそうに思うすずめと同じように生きているのだと、私は心の底から感じた。
 青虫のお母さんは、「自分の大切な赤ちゃんが大きくなりますように」といのったからこそ、とびきりおいしそうな私のラディッシュを選んで、卵を生んだのだろう。
 青虫もすずめも、空を飛ぶからすも、のんきそうに歩いているねこも、そして私も、みんな同じように生きている。生きて、いろんな命の音を出していると思う。大きい音、小さい音、きれいな音などいろんな命の音がひびきあっていると思う。
 数日経って見上げた空に、小さなすずめが飛んでいるのが見えた。あのすずめにも、私の命の音が届くといいなと思う。

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