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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2021年度 第57回 受賞作品

日本農業新聞賞

愛情をこめた野菜作り

福岡市立  堤小学校4年門田 一希

「お父さん、大きいのがとれたよ。」
日曜日の午前中、ぼくはたいてい畑に行っている。その日はお正月料理に使う金時人参などを収かくした。ぼくの軍手は土まみれだ。
「そろそろ帰ろうか。」
とお父さんに言われて、車に乗った。車の中は、とれたての野菜と土のにおいがして、今日もがんばったと得意な気持ちになった。
 ぼくが畑で野菜作りを始めたのは一年前。いつも家にいるぼくを見かねて、少しは日に当たるよう、母にすすめられたのがきっかけだ。最初のうちは、おじいちゃんが作った野菜の収かくだけしていたが、だんだん自分でも育ててみたくなり、今では十種類程作っている。くわで土を掘り起こしたり、水やりをしたりするのは大変な作業だ。だけど、少しずつ成長していく野菜を見ると、がんばってお世話しようという気持ちになる。しかも、自分で作った野菜の味は特別で、野菜ぎらいのぼくがいつも残さずペロリと食べてしまうから不思議だ。
 新年をむかえ、ぼくの作った野菜が紅白なますや筑前煮になってお正月の食卓に並んだ。昨年まで手をつけなかったおせち料理を、今年はおそるおそる食べてみた。
「あれ、すごくおいしい。なんでだ。」
とぼくは言った。するとお母さんが、
「いづ君が愛情をこめて一生けん命作った野菜だから、特別においしく感じるんだよ。」
と言った。そう言われると、本当にぼくの気持ちが野菜に伝わっておいしくなるような気がしてくる。
 次の日、ぼくはまた畑に行った。苦手な小松菜の種をまくためだ。きらいな野菜も愛情こめて育てれば、おいしくなるかもしれない。いつも以上に丁寧に土を起こし、種をまき、優しく水やりをした。そしてぼくは、近くにいるお父さんに聞こえないよう、
「大切に育てるから、おいしくなって。」
と言った。収かくまで一ケ月ちょっと。愛情をこめて大事に育てよう。

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