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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2021年度 第57回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

今やれることは

国立大学法人  福岡教育大学附属福岡中学校2年佐々木 咲綾

 「今週から、引き継ぎを始めてください。」
 二〇二一年十一月、私は憧れだった広報総務になった。広報係は朝・昼の放送をしたりイベントに向けて新聞を作ったりする係だ。広報総務はその係のトップで、私は一年生の頃から副総務としてこの係に携わってきた。そのおかげで私は仕事を把握しており、総務になってもこなしていける自信があった。
 いよいよか。
 私は楽しみと思う気持ち、やってみたいと思う気持ちでいっぱいだった。
 先生の言う引き継ぎという言葉で、今のメンバーで仕事をしていくのもあとわずかなのかと、気付かされた。
 そのようななか、ふと私は一年前の自分を思い出した。コロナ禍で、やっと学校にも行くことができるようになったが、新しい中学生活に慣れず不安しかなかった。なりたい自分にもなかなかなれないような気がして、もがいていた。そのようなとき、私は一つの企画を思いついた。企画としては足りないことも多かったと思う。だが、係の先輩方は笑顔で受け取り、係内や他の生徒会のみんなで練り上げ、その企画を実現してくれた。私のことを後輩としてではなく、一人の仲間として考え、案を採用してくれ、本当に嬉しかった。それからの私は、少しずつ自分に自信がもて、また、広報係の一員として努力しようと思い、自分を取り戻せた。
 この仕事なしでは考えられないと思うほどの居場所を作ってくれた先輩、私を信じてくれた先輩、みんなで良い企画を作り上げようと努力してくれた先輩。そのような先輩の姿が忘れられない。いざ自分が先輩の立場になったとき、改めて先輩方の、存在の大きさに気付かされた。
「その先輩方ともう別れることになるなんて。もっと先輩と一緒に仕事がしたい。」
 知らない間に涙がこぼれていた。
 でも、泣いている暇はない。新しい代で運営する係会の日はもう、すぐ近くだ。きらきら輝いていた先輩方と今の自分。その差に気付いた。大きな衝撃と気付かなかった方が良かったのではないかという後悔に似た感情が押し寄せてきて、私は思わず唇を嚙み締めた。
 そのとき、一つの言葉が私の頭をよぎった。書類ファイルを引き継ぐとき、先輩からかけられた言葉だ。
 「やれることは無限大。だから今、できることを最大限に行おう。それでも上手くいかないかもしれないけど、大丈夫。また変えればいいからさ。」
 今、できること。何だろう。考えても分からないまま、時間が過ぎていった。
 数日後の部活動でのこと。私は吹奏楽部に所属している。今日も先生の指導が入っていた。
「音楽はつながっていくもの。誰かの番が終わっても、自分の番が終わっても、曲が終わるまで、終わりを知らせる終止線のところに来るまで、ずっと続く。それは人も同じ。だから、つなげて。最後まで。」
 前から言われ続けていた言葉。だが、今日はその言葉にはっとさせられて、
「そうだ。」
と、思わずつぶやいた。
 先輩も私も、いずれは卒業して広報係を離れていく。けれども、先輩と一緒に作った企画や、私が考えたアイディアはずっと続いていくのではないだろうか。まだこの係は終わらない。先輩が最大限の努力で作ってきた広報係を、さらに育てること。広げていくこと。それが、私の、今できること。先輩の思いを知っている、今の私にしかできないこと。そうだろう。
 広報総務は、いや、世の中の全ての仕事は、興味やその時の気持ちだけで務まるものではないと思う。経験、技術、知識、人脈など、そのほかにも数えきれないほどの努力が実を結んで結果になる。しかし、その裏ではそれよりももっとたくさんの努力があり、失敗したり、諦めたりしてなくなっていく。その繰り返しで、成り立っていたのだろう。
 引き継ぎで受け取った歴代の総務の先輩方が残してくれたファイルからは、それが手に取るように伝わってきた。そしてそれを総務になって、身にしみて感じることができた。
 それでも、私は広報総務になったことを絶対に後悔しない。どんなに大変でも、辛くても。間違ったとしても、失敗してもそれが今の最大限なら、それで良いと分かったから。
 先輩とほぼ毎日座った、そしてもう一緒に座ることのないであろう放送室の中の椅子を見つめながら、思い出の中の先輩に話しかける。ほほえみながら。
 先輩、私は先輩の思いを受け取って、引き継いで、つなげていきます。そして、もっと盛り上げていきます。大好きな先輩と作った大好きな広報係が最高の係になるように。
 どこかすっきりとした希望が見えてきた思いで、今度は声に出してつぶやく。
 「今、やれることは、無限大。」

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