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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2021年度 第57回 受賞作品

福岡県知事賞

ふるさと証明書

私立  福岡雙葉小学校5年齋藤 奎音

「おぐれるがら、はやぐごーい!」
父が大声で私を呼んでいる。多めの濁点を取り除くと、
「遅れるから早く来―い!」
 岩手県で生まれ育った父の言葉には、たくさんの濁点が散りばめられている。転勤で福岡に来てから八年。いまだに生粋の東北弁をキープしている。もしも「東北ズーズー弁オリンピック」があったら、間違いなく金メダル級だと思う。
 そんな父との方言エピソードは数々ある。
散らかった私の机を見た父が一言、
「つぐえのゴミ投げろー。」
五才の私は、不思議に思いながらもゴミをつかみ、野球の投球ポーズをした。
「ちがうちがう。お父さんはゴミを捨ててって言ったんだよ。」
母が、大笑いしながら言った。岩手では「捨てる」ことを「投げる」と言うのだ。
 家に友達が遊びに来た時は、恥ずかしい思いをした。父は、お昼ご飯に流しそうめんを準備してくれた。
「そうめんのつゆ、水ど、よぐがませよ。」
友達は全員、きょとんとしてしまった。
もう!『かませ』が『混ぜて』ってことなんて、博多っ子の友達に通じるわけないのに。
そう母に愚痴をこぼすと、
「方言ってね、すごく良いものなんだよ。」
と、ある短歌を教えてくれた。
「ふるさとの 訛りなつかし
 停車場の 人ごみの中に
 そを 聴きにいく」
 岩手県出身の歌人、石川啄木の歌だ。そういえば、父の濁点だらけの東北弁を聴いていると、ちょっと懐かしい気持ちになれる。
 深く積もった雪に、ぎゅっぎゅっと足跡をつけながら歩いた、幼稚園までの道。
 毎年やってくる白鳥の群れ。クワックワッと鳴き声を響かせながら、きれいなV字連隊で冬の青空を飛んでいく。
 幼い頃過ごした、故郷岩手の景色が浮かんできて、胸がじんわりする。
 そうか。方言って、故郷そのものなんだ。この歌が、私に方言の大切さを教えてくれた。
「おばあちゃん、なんしようと?」
ある日、祖母に話しかけた。
「あら、すっかり福岡の人になってきたね。博多弁ってかわいいねえ。」
と、言ってもらえた。少しだけ照れくさかったけど、私の口から自然にこぼれた言葉は、
「福岡が、私の新しい故郷だよ。」
と、証明書をもらえたみたいで、何だか誇らしい気持ちになった。
 私が大人になった時には、博多弁を聴くと温かくて懐かしい気持ちになれるように、これから福岡で、たくさんの思い出をつくっていきたい。

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