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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2021年度 第57回 受賞作品

福岡県知事賞

プチ反こう期と魔法のハグ

私立  福岡雙葉小学校4年田中 心望

「ここちゃーん。明日のじゅんび早く終わらせなさいね。」
「分かってるよ、今やろうと思っていたところ。」
私は、少しムッとしながら返事をした。
「あらそうなの?以心伝心ねぇ。」
お母さんは上機げんで夕飯の後かた付けをしている。私は体の中で正体不明のモヤモヤとイライラがゴボゴボと音を立てているのを感じた。
「手あらい、うがいはした?」
「宿題は終わった?」
「本はかた付けたの?」
今からやろうとしたことを先にお母さんから言われると、やる気スイッチがどこかに消えてしまう。それをまたさがし出すのは大変なのに。
 とうとうある日、正体不明のモヤモヤとイライラが、ドドーンとばく発してすがたをあらわした。
「もうっ、うるさいなぁ。」
私はお母さんに大声で強く言い返してしまった。言ってはいけない言葉だと分かっていたのに、言葉が勝手に口から飛び出していった。
「今なんて言ったの。」
私はドキッとしながら横目でお母さんを見た。びっくりしているような、ショックを受けているような表情に見えた。今度は一気に反せいの気持ちと悲しい気持ちがザブーンとおそって来て、目の前がぼやけ始めた。
「一体どうしちゃったんだろう、私。」
するとお母さんが近づいて来て、私のことをギュッとだきしめながら言った。
「プチ反こう期かな。それはここちゃんが順調に成長しているあかしなんだよ。」
お母さんの心ぞうの音が聞こえる。
「ドクンドクンドクン。」
やさしくて温かくなつかしい音。さっきまであんなにぐちゃぐちゃだった感情が、スーッと消えていった。お母さんのハグがまるで魔法のように感じた。
 お母さんはプチ反こう期だと言っていたけど、あの時私の中で何が起こったのか未だによく分からない。でも、もし次にあらわれたら、
「お母さん、魔法のハグをお願い!」
と言おう。

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