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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

RKB毎日放送賞

カルタが教えてくれたこと

久山町立  久山中学校1年久芳 れな

 「ふるさとにエビネの花の咲きほこり」
 「くじけずに町のあしたを僕の手で」
この言葉を聞いたことはあるだろうか。これは私の住んでいる久山町の「道徳カルタ」の一つである。カルタには四十年という歴史があり、世代を越えて愛されている。
 そんな中、私がこのカルタに出会ったのは小学一年生のときだった。その頃は昔遊びの一つとして楽しんでいただけで何も感じなかった。しかし、それから数年たったこの冬。久しぶりに箱を開けるととてもなつかしいにおいとともにばらばらの札が顔を出した。「あれから何年たったのかな」札を見ながら、あのとき何も感じなかったのにどうして今、こんなに気になるのだろうか。それは中学生になり物事に対する感じ方、考え方が変わったからなのかもしれない。
  「町ぐるみこころの花を咲かせよう」それは朝の出来事。自転車で登校していたとき、あるおばあちゃんに出会った。私が、
「おはようございます。」
と挨拶をすると、おばあちゃんは
「あら、おはよう。今日もがんばってね。」
にっこり笑顔でかえしてくれた。そんな笑顔をみると心がぽっと温かくなり、挨拶してよかったと自信を持つことができた。顔も名前も知らない人とたった数秒の言葉を交わす。何も特別なことではないかもしれない。けれど、私にとっては特別なことだと思っている。こんな小さなやり取りだが、それが広がることで人々の心の花が咲いていく。これこそが「町ぐるみ心の花を咲かせよう」なのではないかと考えているからだ。
 このカルタには他にも日常生活でのルールやマナーなど道徳の心を遊びながら身に付けてほしいという町民の思いがつまっている。このとき私は初めてカルタに込められた思いを感じとることができたのではないかと思った。このような取り組みはどの地域も行われているわけではない。久山だから、優しく温かい気持ちであふれているこの久山だからできることなのだ。
 この久山では子供たちにもっとカルタに親しんでほしいという願いのもとから、道徳カルタ大会が行われている。私も何度か参加したことがあり、家族とよく練習したのを覚えている。他にも「さべつなくふれあう心で町づくり」「れいぎよく今日も元気に寒げいこ」これらはあいさつ運動や子供相撲大会の目的にピッタリ重なった。あいさつ運動では地域の方や学校の先生、友達とお互いに挨拶を交わす。最初はたくさんの人から挨拶をされることに抵抗があった。それでもにっこり笑顔で挨拶してくれたあのおばあちゃんを思い出すと自然に声が出ていたこともあった。子供相撲大会では実際に参加した弟の応援に行き、びっしょりと汗をかくぐらい白熱した戦い、そしてきちんと礼をし、握手で通じ合う尊重の心。そんな姿に感動したし、礼儀をもった元気な子に育ってほしいという町の人々の強い気持ちが伝わってきた。そう、このカルタは私たちに向けてのメッセージカードだったのだ。
 最後に、私がこのカルタにふれてわかったこと、それはカルタにつまっているのは歴史だけではないということだ。たった一枚欠けてもこのカルタは成り立っていない。祖母、祖父の時代に考えられ、それが今もつながっている。
 なぜ今もつながっているのか。答えは一つ、「皆が町を愛しているから」だ。毎日の交通指導をしてくださる方。町の清掃や挨拶をとどけてくださる方。時には厳しく、時には優しく。そこまでしてでも、久山町を守り、より良くしていきたいという意志があるからこそ続けてくださっているのだと思う。それはカルタも同じだ。一枚を決めるためにどれだけの知恵と労力がかかったのか。それでも完成し、今でも続いているのはやはり意志があったのだからだと思う。この道徳カルタは町民の手でつくられているからこそ、久山町民にしかわからない良さがあり、必ず何か心にぐっと感じるものがある。カルタに込められた思いが自分に伝わったとき、初めて町民として受け入れてもらえた気がした。
 私はこの久山町が大好きだ。自然も、人も、カルタも。これからもっとカルタに込められた思いを感じ、町を愛する人が増えてほしい、これが私の願いだ。
「カルタの思いは私がつないで見せる!」
とびきり大きな声でさけびたい。そして私の思いが声にのって、カルタに届きますように。

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