ホーム > 小・中学生作文コンクール > 過去の受賞作品

「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

RKB毎日放送賞

思い出の木

福岡市立  舞松原小学校5年石村 碧惟

 「いってきます。」
お母さんにたのまれたおもちを買いに行くために、自転車に乗って走り出した。外は寒く、風が強く体に当たってくる。
「はぁー。」
はく息が白くなっていた。自然とわきがしまる。スーパーがある通りの角を右に曲がって、ちゅうりん場に自転車をとめて、小走りでスーパーのドアへかけ寄った。
「キィ」
ドアをおして、辺りを見回した。
「おもちはどこにあるのかな。」
エコバッグを持ち直して、歩き始める。右に行ったり、左に行ったりしながら、ようやくおもちがあるところに着いた。一ふくろ取って、お会計をし、急いでちゅうりん場へ向かった。
 ゆう便局を通って、クリーニング屋を通り、最後の曲がり角に着いたときに、いつもとちがうところに気がついた。
「木が切られてる…。」
その木は、いつもたくさんの葉をつけている大きな木だった。でも、目の前にあるのは、太い枝が切られていて、切られた枝の年輪が見えている木だった。毎年、この木の下でお弁当を食べたり、落ちてきた大きな葉でお面をつくって遊んだりしていた。しげった葉っぱの下は日かげになって、飼っている猫をだいてよく散歩をしに来ている。
「さびしいな…。」
私は心の中でそう思った。色々な思い出に包まれながら、自転車をこいで、お家へと帰った。
 お母さんに、木が切られていることを伝えると、
「毎年、あそこでお弁当を食べるの、楽しみだったのにね…。」
と、さびしそうに笑った。
 数日後、またあの木をよく見てみると、木から細い枝がのびていて、葉っぱもいくつかついていた。
「ああやって少しずつ成長していくのかな。この木も生きようとしているのかな。」
少しホッとした気がした。何年も、何十年も経って、私がおばあちゃんになるころには、前みたいに葉っぱがしげっているかもしれないと思ったから。
「フフッ。」
自然と笑みがこぼれた。また、あのころみたいに大きくてりっぱな木になって、葉っぱがしげるようになったら、木のかげの下で、家族みんなといっしょに木をかこって、お弁当が食べたい。

ページ上へ