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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2016年度 第52回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

もの足りなさのわけは

福岡市  勝馬小学校6年鈴木 真子

「これがいいっ。」

パソコンの前にすわり、母と一緒に選んでいるのは、私の学習机だ。六年生の終わりになって学習机を選んでいるなんて、きっと不思議に思われるだろう。小学校入学の時に机を買ってもらわなかった私は、六年間自分にぴったりの机をさがして家の中をグルグル回ってきた。数々の机との思い出がある。

 第一の机は、だ円形のテーブルだ。リビングのテレビ台の前のスペースに置かれていた。このテーブルの欠点は、高さが三十センチメートルほどしかなく、勉強中にずっと腰が曲がった状態になってしまうことだった。背が伸びるにつれて苦しくなった私は、次の机を探すことになった。

 第二の机は、折りたたみ机だ。移動が簡単でけっこう気に入っていたが、ある日事件は起きた。ある年の冬休み。書写の清書をするという宿題が出た。気合いを入れて書き、最終段階に入った。と、その時。「ガリッ」とにぶい音がした。私の目は点になる。机に傷があって、へこみにえん筆が引っかかってしまったのだ。下じきをきちんと使わなかった自分を責める前に、机を責めてしまった。

 第三の「机」は、テレビ台。もはや机ではないけれど、傷はないし高さもちょうどいい。ただ、やはりテレビ台ならではの欠点がある。一つは、足が台の下に入らないこと。下に物をたくさん置いているので、ひざ立ちするか足を広げて座るしかない。もう一つは、テレビを見たい父との戦いが起こること。私の頭でテレビがかくれて見えないと父が文句を言う。結果的には「勉強」という強大なたてに守られて私の言い分が通り、父はあきらめて自分の部屋に引きこもってしまう。机問題は、ついに家族の交流減少という危機まで引き起こそうとしていた。

 そして現在にいたる。もうすぐ中学生になる私のために、両親が学習机を買ってくれることになったのである。机の上には教科書や辞典を置いて、かべには思い出の写真をはる。たなにはお気に入りの物をかざりたい。そんな想像をふくらませながら、うきうきで選んだダークブラウンのシンプルなその机は、冬休みにわが家へやってきた。そして、父の部屋のとなりのスペースに設置された。

 さあ、これで腰の痛みとも、机の傷とも、父との戦いともおさらばだ。さっそく私だけの学習スペースに座ってみた。新鮮で身が引きしまる思いだ。ただ…、何かが足りない。私は足早にリビングの両親のもとに行った。

「ねえ、さみしいけんいっしょに来てよ。」

それは思わず出た言葉だった。そうか。六年間、数々の机とともに、いつも両親が私のことをそばで見守ってくれていたんだな。もの足りなさのわけが分かるとともに、私は両親に心から感謝した。

 私が新しい机になれるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。

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