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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2016年度 第52回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

祖父の思い出がつまった部屋

北九州市  折尾西小学校5年遠矢 彩

 木のにおいがほんのりと鼻に来る。私は久しぶりに祖父の部屋に入ってみた。少し和風な部屋だが、中にはいろいろなものがある。テレビやエアコンなど今時の物がある。しかし、中には古い物もたくさんある。私は、そんな不思議な部屋を調べてみることにした。

 祖父の部屋には、黒っぽい、暗めの色の物がたくさんあった。例えば、小さいかばん。ポケットが五つくらいあり黒一色。やはり古いだけあって糸がほつれていたり、よごれがあったりする。次は、古いコート。もちろん黒。この二つの道具には、私の思い出がある。小さい黒いかばんは、私が保育所から帰るときにむかえに来てくれていた祖父の手にいつもあった。黒いコートも冬にむかえに来てくれたときは必ず着ていた。コートを見ると、どんなに寒いときも祖父はむかえに来てくれたのだと改めて思い出す。

 そのとき、保育所の帰りにスーパーによった日のある出来事も思い出した。昔から私は、祖父におかしやおもちゃなど買ってほしい物を買ってもらえなかった。

「生きていくことに必要な物以外はいらん。」

と言うので、私も買ってほしいと言わなくなった。その日は、スーパーに祖父が薬を買うためによったのだが、薬をレジに持って行ったとき、近くにシールがあった。そこで、おどろくことが起こった。なんと、

「ほれ、家にはりまくったらいかんぞ。」

と言ってそのシールを私にくれたのだ。あの祖父が何故買ってくれたのかは分からない。そのときの気持ちはとても不思議だったが、とてもうれしかったことを今でもおぼえている。その日から、私は買ってもらったうさぎやコアラなどの動物シールを五年生になった今でも使うことなく、大切にしまっている。

 祖父が持っている古い物を見て祖母は、

「新しい物買ったら。」

と何度も言っている。別に新しい物が買えないわけではない。しかし、祖父は祖母の提案を全く聞き入れず、買いかえようとはしない。祖父は物が使えなくなるまで新しい物を買わない。父もそうだ。この考えは遠矢家の考え方なのだろう。祖父のおかげで、私も使えるものは最後まで使うことを心がけている。長く使っている物には、思い出がつまっていく。私は思い出も大切にしたい。

 現代は、大量に少ない費用で物を生産できる時代。百円で生活に必要な物が手に入る時代。そのためか、簡単に物を捨てる時代でもある。道に捨ててあるゴミ、山などに不法投きされるゴミなど、本当にめいわくだ。物は豊かだが、心は貧しいと思う。その中で、この部屋にある古い物を大切にする祖父は心がきれいなのだと思う。

「今度、祖父が物を大切にする理由を聞いてみよう。」

私は、そう思いながら祖父の思い出のつまった部屋を出た。

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