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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

西日本新聞社賞

食のありがたさ

篠栗町立  篠栗北中学校2年小野寺 渚

 「いただきます。」
あなたはなぜこの言葉を言っているだろうか。作ってくれた人への感謝、日本人としてのマナー、食べ物への感謝など様々な理由があるだろう。私が「食」について考えるようになったのは、今から約二年前のことだ。
 私が六年生のときに父の友達の所でにわとりの解体を手伝った。誘われたときは寒かったことや冬休みだったこともあり、家でのんびり過ごしたいという気持ちが強く、断ろうと思っていた。しかし母は、
「食べ物について考えることも、料理をするうえで大事なことなんだよ。」
と言った。そのときの私は料理をすることが好きだったためそこまで言うなら行ってみようかなという気持ちになった。初めて体験するということもあり、日が過ぎていくにつれて少しずつわくわくした気持ちが高まっていった。
 当日、父の友達の所へ行くとにわとりはもう、首を取られ無残な姿になっていた。私はそれを見て、わくわくした気持ちはなくなり体が硬直してしまうほど怖くなった。その様子を見ていた父は私に、
「そんなに怖がっていたら、にわとりもかわいそうだろう。おいしく食べてあげようよ。」
と言ってくれた。その言葉が心にしみ入り、私もおいしく食べたほうがにわとりもうれしいはずと思うようになった。
 解体は父の友達が教えてくれた。まず、にわとりの毛をむしる作業を行った。にわとりの体はまだ温かく、命を感じることのできるものだった。にわとりの毛は丈夫についていてとるのが大変だった。私が困っていると父の友達が
「お湯につけたら簡単に取ることができるよ。」
と言った。言われたとおり、にわとりがゆだらないように注意しながらお湯につけると、とても簡単に取ることができるようになった。次に胴体の部分から、うでや脚を切り分ける作業を行った。皮がとてもかたく包丁を入れるポイントが難しかったが、父の友達がわかりやすく教えてくれたおかげで、きれいに分けることができた。時間がかかったが、一度も気を抜くことなく行うことができた。最後に、胴体の部分を開く作業を行った。お腹の部分を開いて、内臓を取り出したり、食べることのできる部分に分けたりした。生き物の体の中を見たのは初めてだったため、見たときはうわぁと思ったが、父に言われた言葉を思い出し、がんばって取り組んだ。また、新たな発見もあった。卵は体内ですでにかたい殻におおわれていると思っていたが実際には殻におおわれていなかったり、砂肝と呼ばれ私たちが食べている部位には本当に砂が入っているから砂肝と呼ばれていたりすることなどだ。全ての作業を終えたころには、怖いという気持ちはなくなっていた。むしろ、やりとげることのできたという達成感が体中にみなぎっていた。
 夜ご飯は、みんなでバーベキューをした。自分で解体したとり肉を炭火で焼いて、塩こしょうをかけて食べた。にわとりは筋肉質だったためかたいだろうと思っていたが、実際に食べてみるとやわらかく、いつも食べているスーパーで買ったとり肉よりもとてもおいしく感じた。家族からも、
「おいしい。」
と言ってもらえてとてもうれしく、勇気を出してやってよかったなと思えた。とり肉はすぐになくなり楽しい時間を過ごした。父の友達は、
「来年も来てくれる?」
と言った。来年は私も中学生になり勉強や部活動で忙しくなると思ったため少し迷ったが、元気よく
「はい!」
と答えた。
 私はこの体験を通して、食べ物について考え、食へのありがたみを改めて学ぶことができた。全ての食べ物には命があり、私たちが食べることのできる食用になるには、たくさんの苦労があった。少しでも生き物に感謝を伝えるために私たちにできることは、残さずきれいにおいしくいただくことだと思う。しかし、現在の日本では、食品ロスが社会問題となっている。食品ロスを減らすため、みなさんにも食について考えてほしい。私も「食」について考え、一食一食の食事をおいしくいただきたいと思う。感謝を込めて、
「いただきます。」

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