ホーム > 小・中学生作文コンクール > 過去の受賞作品

「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

西日本新聞社賞

立方センチメートルにつまった思い

宇美町立  原田小学校5年南里 美穂

 私がさいほう教室に通おうと思ったのは、家庭科の時間に初めて習ったミシンに感動したからだ。ミシンは手ぬいより速くぬえるし、しかもぬい目がじょうぶだ。
「なんて、キラキラした世界なのだろう!」
 私は、すぐにさいほう教室に行ってみた。そのさいほう教室には何人かの人がいて、みんなにじっと見られているときんちょうして、キラキラしたさいほうの世界に行ってみたいという私の気持ちは、ぺしゃんこになってしまいそうだった。それでも私は思い切って、
「バッグを作りたいです。」
と言うと、先生が次から次にすることを教えてくれて、すぐにバッグが完成した。
 先生以外の人は、私の母や祖母くらいの年の人たちで、私と同じ「生徒さん」だった。
「あら!かわいいバッグができたわね。」
と、ずっと前から知っている友達のように話しかけてくれて、私の心は少し軽くなった。
「美穂ちゃん、次はスカートを作ったら?」
と、いとうさんが言った。
「スカートなんてむずかしすぎるよ。」と、私が心の中で思っていると、
「できあがったら達成感があるわよ。」
と、いとうさんは作りあげたばかりのズボンをはいて、くるりと回りながらほほえんだ。私は、いとうさんの魔法にかかってしまい、
「今度は、スカートを作ります。」
と、次の予約をした。
 いよいよスカートを作る日がきた。スカートのたけを40センチメートルと決めて、布の、たて40センチメートルのところに、印をつけた。スカートの形を決めて、今度は横160センチメートルのところに印をつけた。
「センチメートルが、平方センチメートルになった!」
心がおどりだしそうなくらい、飛びはねた。
 苦労したのはダーツをぬう時だ。待ちばりを打つのに何度も指をさしてしまった。ダーツは小さい部分なので、ぬうのもむずかしい。何度も失敗して、冷やあせが出た。スカートを作り始めたことをこうかいした時、
「美穂ちゃん、がんばっているわねぇ。」
と、みんなが声をかけてくれた。私はみるみる元気になった。みんな、ちがうものを作っているけど、完成というゴールに向かって進んでいるのは同じだ。だから、みんなに声をかけてもらうと、もっともっと進もうという勇気が出てくるのだろうと思った。
 苦労して完成したスカートをはいて、おひろめをした。みんなが拍手をしてくれたので、ひざがくすぐったくなるくらいうれしかった。
「できあがった時のこの気持ちがあるから、作るのってやめられないよね。」
と、いずみさんが言った。私はその通りだと思った。平面だった布からでき上がったスカートは、私をふわりと包んでくれるすてきな立方センチメートルになった。立方センチメートルになるまでには、何度も失敗して、涙が出た。でも、みんなにはげまされて元気も出た。だから、このスカートには、私のいろんな気持ちがたくさんつまっている。
 このスカートをはくと、何だか勇気が出てきて、今日も大きく一歩をふみ出せそうだ。

ページ上へ