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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

西日本新聞社賞

幸せの波紋

宇美町立  原田小学校6年平野 晴己

「あ、もうだめだ。あいさつ運動におくれてしまう。」
 心の中で思っていたことをついついつぶやいていた。その日は、毎週水曜日にあるあいさつ運動の日。通学路の坂で、ピンク色の車が横道からぼく達が進んでいる車線に入りたそうにしていた。
「あーもう前に入られるのはいやだなあ。」
と小さい声でぶつぶつとつぶやいていた。すると、お母さんはにっこりと笑って前をゆずった。ぼくは、何でゆずったのかが分からなかった。
「何でゆずったの。」
とお母さんに少しふてくされて聞くと、お母さんは、にっこりと笑って言った。
「だってあの人だって急いでたじゃない。一人がよいことをすることで、みんなが幸せな気持ちになっていくんじゃないかな。幸せがここから世界中に広がっていくといいね。今日もいい一日になるといいね。いってらっしゃい。」
いつも以上に、優しい声だった。ぼくは、車を出ると分かったようで分からないような気持ちになっていった。
 あいさつ運動をするときもお母さんの言ったことの意味が分からなくて悩んでいた。昼休みのときに遊んでいたら母の言葉が何かに似ていることに気がついた。それは、「波紋」だ。水の中に水滴が落ちると、円みたいに波紋が広がっていく。だから、だれかが幸せの水滴を落としたら、他の人達にも波紋みたいに次々に幸せの気持ちが広がっていく。幸せが連鎖していくと、一人が先をゆずっていったり親切にしたりする事でたくさんの人々が幸せになる。
 あのピンク色の車を運転していた人も、あのとき幸せの波紋を感じていてくれたのかもしれない。母もそう思って、あのピンク色の車の人にゆずったのかもしれない。だから、ぼくは、「幸せの波紋」を広げるためにトイレの順番を待っている人に、
「お先にどうぞ。」
と言ったり、そうじの時にごみ一つ落ちていないようにするために何回もはいたりした。
 あいさつでは、「ピタッ、ニコッ、ペコリ。」というスローガンを守り、大きな声で、
「こんにちは。」
とあいさつをし、多くの人達を笑顔にした。ぼくが落とした水滴が周りの人を幸せにする波紋になるかもしれない。
 学校から帰宅するとき、ぼくは、お母さんに、お母さんの言ったことの意味を胸を張って言える。家の玄関を開けて、大きな声を出して、
「ただいま。お母さん、幸せの波紋が広がるようにがんばったよ。」
 いつか幸せの波紋が世界中に広がって、みんなが笑顔になってほしいなと思う。

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