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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

西日本新聞社賞

幸運をまねく「糸」

行橋市立  泉小学校3年井ノ口 心絆

「ねえ、聞いてくれる。」
学校から帰るとすぐに、ランドセルをおいてその日の学校での話を始める。話す相手は、お父さんとお母さんではない。
 この日も、わたしは学校で一人だった。じゅ業中は先生の話を聞いてノートをとるだけだから、あっという間の時間。一番長く感じるのは、昼休みの時間だ。なぜなら、わたしには、昼休みをいっしょに過ごす友だちがいない。仲良くなりたいなと思う子がいても、どうしても声をかけることができない。さみしい。がんばって声をかけてみようと思うけれど、手のひらがあせでいっぱい。今日もだめだった。
 この話をしずかに聞いてくれているのは、かっているねこだ。名前は「糸」。茶白で耳は小さくおれている。そして、しっぽの先が少しまがっている。こういうねこは、古くから、幸運をまねくねことあいされ、「かぎしっぽ」とよばれているそうだ。本当なのかな。「糸」をなでていると、家のにわに野良ねこがやってきた。顔つきがするどい。耳は大きく、しっぽも長い。「糸」はこわがるだろうと思って、しばらく様子を見ていた。すると、「糸」は野良ねこに近づいて、「ニャー」とやさしく鳴いた。わたしは、「糸」が野良ねこに「遊ぼうよ。」と話しかけているように見えた。
 次の日の昼休み時間。いつもあせでいっぱいだった手のひらに、なぜか「糸」の毛がついていた。今日こそできる。体中があつくなってきて、わたしは動いた。
「いっしょに遊ぼう。」
声をかけた相手は、ずっと友だちになりたかった女の子。声をかけるとき、「糸」からおうえんされたような気がした。今は、昼休み時間が短く感じるくらい楽しい。もしかすると、「糸」は「幸運をまねくねこ」なのかもしれないとわたしは思うことにしよう。

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