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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

母がいるから…

私立  明治学園小学校5年峠 愛梨

「ねぇ、お母さん、お母さんの事作文に書いてもいい?」
と私は聞いた。
「いやよ。また電柱から体がはみ出てるって書くんでしょ。」
と母が言った。
 四年生の時に書いた作文を気にしている。でも、私はどうしても母のことを書きたい。
 新型コロナウイルスで、不安や心配で胸が苦しくなる日々が一年ぐらい続いている。テレビや新聞でいつ誰が感染してもおかしくない状況だと耳にすると、どうしようと不安になる。でも母はいつも、
「大丈夫だよ。だってこれだけ国の言う通りの行動をしているんだよ。いや、それ以上のことをしているから。もし感染しても誰も責めたりしないよ。それと周りに感染者が出ても決して責めたらだめだよ。感染した人が一番つらいのだからね。」
と言う。
 三密はもちろん、家の中でもマスク、外食や人の集まる所には行かない。買い物は母だけが行く。帰宅すると手洗い、歯みがき、うがいをし、すぐにお風呂に入り、着ていた制服や服は洗たく機に入れるという生活をずっとしている。
 ステイホームの四カ月間では、母のすごさを改めて知った。父は単身ふ任中で、祖父母は肺に持病があるため母は誰にも頼ることができない。朝は五時から起きて家事をする。夜中は何度か私と妹のおでこに手を当て、熱がないかを確認している。ほとんど寝ていない母はきっとクタクタだ。でも私達に向けられる顔はいつも優しい。
 ある日、妹が四十度の熱を出した。ずっと家にいたから感染している可能性は低い。けれど私は不安で妹はつらそうだ。母は病院に連絡を入れ発熱しているが診察してもらえるか聞いていた。電話を持つ手は少しふるえていた。でも、それをかくすように優しい声で、
「ごめんね。きついね。でも先生が見てくれるからすぐに良くなるからね。」
と妹を抱っこして言った。
 診察の結果は、のどの炎症。外出していないこともあり、コロナの可能性は極めて低いが薬を飲んで三日経っても症状が改善されない、もしくは悪化するようなら感染している可能性も出てくるそうだ。妹は二日で熱も下がり元気になった。その時、母は涙を流した。なかなか涙が止まらない母を見て、
「本当はお母さん、ずっと不安だったんだ。」
と分かり私も泣いてしまった。
 まだまだ先が見えない新型コロナウイルス、世界のみんなが目に見えない敵と毎日戦っている。時には負けてしまうこともあるかもしれない。けれど私は絶対に負けたくはない。母というとても強くて優しい味方が守ってくれているのだから。

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