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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

ケンポナシの木

私立  明治学園小学校4年阿部 由芽

 その木は、枝が神経の様に細く広がり、緑色のこけが生え、目のようなあながあいたみきが、上へ上へとのびている不思議な形をしていた。冬休みに、そ母と一しょに見たケンポナシの木のことだ。この木は、じゅれい三百年でそ母の町の天然記念物だ。そ母は、この木のことを最近思い出し、わたしにどうしても見せたくなったらしい。わたしも学校で「プラタナスの木」という物語の勉強をして、木のことをずっと考えていたのでびっくりした。だから、一しょに見に行く約そくをした冬休みが来るのをわくわくしながら待っていた。
 約そくの日、そ母の案内でわたしと母は、車で山道を進んで行った。と中で小雨がふり出し、辺りがうす暗くなってだんだん不安になり始めた時、
「ここに駐めて、後は歩いて行くよ。」
とそ母が言った。たくさんの落ち葉をバリバリと力強くふみしめながらどんどん歩いて行くそ母の後ろを、わたし達はおそるおそるついて行った。木と土がまじったような森の香りに包まれながら歩いていると、心がだんだん落ち着いてきて、わたしの不安もどこかへ飛んでいった。
「あれが、ケンポナシの木だよ。三百年、村のくらしを見ながら、一生けん命に生きてきたから、りんとした美しさがあるよね。」
そ母がケンポナシの木を見つめて言った。しばらくして、木の持ち主の方が出て来て、茶色でくねくねした不思議な物をくれた。
「これは、ケンポナシの実だよ。この実はあまくて、香りと味がナシににているから、ケンポナシと言う名になったんだよ。秋にたくさん実が落ちるから、またおいで。」
と言ってくれた。
 わたしは、ケンポナシの木は、そ母ににていると思った。だから長生きできるよ。春には、どんな不思議な葉が出てくるのか、そ母と一しょにたしかめよう。そして夏や秋のケンポナシの木を想ぞうしてとても幸せな気持ちになった。

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