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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

福岡県知事賞

「ま坂」をかけあがれ

筑紫野市立  原田小学校6年藤井 喜穂

「長崎にはたくさん坂があります。その中には、まさか、という坂がひそんでいます。その坂は、修学旅行中に思い通りにならなかったり、急な変こうが起こったりした時に現れます。そんな『ま坂』に出会った時には、限られた中で自分にできることを精一杯して、うまく対応することが、大切なんですよ。」
 修学旅行の結団式の時、四組の新田先生がおっしゃった。
 この言葉は、修学旅行の時はもちろん、修学旅行が終わった今でも私の心に残っている。
 そもそも、修学旅行そのものが、私にとって「まさか」だった。まさか、修学旅行に行けるかどうかも定かではないなんて…。
 新型コロナウイルスの影響は、私たちの学校生活を大きく変え、今まで当たり前にしてきたことが当たり前にできなくなっていった。
 今年は応援団長になるぞ、と密かに心に決めていた運動会だけでなく、一年生の時からあこがれていて、代官様になって神社で演技をすることを夢見ていた時代行列に、一年間の集大成になるはずだった、歌声発表会。楽しみな行事の中止が次々に決まっていった。
 私の身の回りに、こんなに「まさか」であふれる日が来るなんて想像もしていなかった。
 だが、修学旅行は、その「まさか」をはね返し、昨年同様長崎に行けることが決まった。六年生になって、初めての大きな行事。楽しみで楽しみでたまらなかった。
 そうして迎えた結団式の日に聞いた、新田先生の「ま坂」の話。その時には、計画もバッチリな二日間で「まさか」が起こるなんて、と想像がつかなかった。
 それでも現れた「ま坂。」フィールドワークの始まりが、予定より三十分近くおくれてしまったのである。班のみんなと何回も話し合って調整し、短いフィールドワークの中でどうしたら全て回れるか一生けん命考えたのに、三十分も短くなったら全部回れるのか…。
 今までの私だったら、予定通りに進まないことが残念で、面白くない気持ちでいっぱいになり、そのことを引きずっていただろう。
 そんな時、新田先生の「『ま坂』につまずいた時、どれだけのことができるかが重要なんだよ。」という言葉が思い出された。今が、その「まさか」だ。予定と違っていてもいいじゃないか。修学旅行に来られただけでもありがたいんだ。できることを精一杯やろう。せっかくの二日間、楽しんだもん勝ちだ。
 そんな気持ちでのぞんだフィールドワークは大成功だった。班全員で話し合って進めたので、全て回れ、みんな笑顔でゴールできた。
 私はそれまで変こうに対応する時には、後ろ向きな気持ちで行うことが多かった。しかし、変こうに対し前向きな気持ちで精一杯のことを行うことで、やり終わった時の気持ちが大きく変わることに気付いた。
 私にとっても世界にとっても、「まさか」はまだまだ続いている。だが、その「まさか」に前向きに対応し、できることを精一杯やることで、達成感や幸せな気持ちを積み上げていきたい。そうやってこれからも目の前の「ま坂」をかけ上がっていこうと思う。

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