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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2019年度 第55回 受賞作品

RKB毎日放送賞

兄とラグビー

北九州市立  熊西中学校1年西尾 有咲

 私には高校二年生の兄がいます。お調子者で友達も多く、学校の先生のものまねなどをよくするおもしろい兄です。しかし、スポーツはあまり得意な方ではなく、体格も細身で、中学校では帰宅部でした。
 そんな兄が高校に入学してしばらくしたとき、帰宅してすぐ、母に、
「俺、ラグビー部に入る。」
と言いました。思いもよらない言葉を耳にし母は、
「え?何て言った?」
と言いました。兄はもう一度
「友達に誘われたからラグビー部に入る。」
と言いました。母は、
「ラグビーは、筋肉ムキムキの人がするスポーツよ。」
と言いました。それもそのはず、兄は身長は高いけれど、どう見ても細身で、ラグビーをするような体型ではありません。しかも、これまでスポーツとはかけ離れた生活をしてきたのです。しかし、兄は、
「俺みたいな者でもできるポジションがあるらしい!」
と言って、迷いはないようでした。その言葉を聞いて母は、
「じゃあ、やってみる?」
と言い、兄は、ラグビー部に入ることになりました。
 それから、兄のラグビー生活が始まりました。毎日のようにすり傷をつくって帰ってくるし、過呼吸になったことだってあります。また、軽い脳しんとうを起こして記憶が飛んだこともあります。私も両親もそんな兄を心配しました。しかし、兄は、
「ラグビー楽しい!部活楽しい!」
と言い、やめる気配は全くありませんでした。
 そして、両親は、兄の試合を応援しに行くようになり、どんどんラグビーの魅力に引き込まれていったようです。家でもラグビーの話をすることが増え、夢中になっているのが分かりました。私は、ラグビーのルールも分からず、ラグビーのどこがおもしろいのかもよく分かっていませんでした。私は中学に入って卓球部に入りましたが、両親はラグビーに夢中だったので、正直あまりおもしろくありませんでした。
 そんな中、昨年、日本でラグビーのワールドカップが開催されました。母は、テレビを見ながらキャーキャー大声を出して応援していました。私はそんな母をちょっとうるさいなと思いながら、初めてテレビでラグビーの試合を見ました。体と体をぶつけあってその度に転んでは起きて、ボールを仲間につないでいく、ラグビーはそんなスポーツでした。そして、私は、そのとき初めて兄がいつもけがをする理由が分かりました。細身の兄がよくこんなことをできるなと思いました。
 兄の部活動のTシャツに、「ONE FOR ALL ALL FOR ONE」という文字が書いてあります。「一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために」、そういう意味だと聞きました。そして、このワールドカップ期間中に私が知った言葉、「ノーサイド」は、試合が終われば、「敵も味方も関係なくお互いを尊重する」というラグビーの精神だそうです。どちらも素敵だと思いました。
 このワールドカップで、日本代表は史上初のベスト8入りを達成することができ、日本中が盛り上がり、日本は一気にラグビーブームになりました。兄がたくさんすり傷をつくっても、楽しいと言っているラグビー、両親が仕事を休んでまでも応援に行き、夢中になっているラグビーのことが、私にも少し分かったような気がしました。
 先日、私の卓球の初めての公式戦がありました。その日はちょうど兄のラグビーの練習試合と重なっていたので、私は、
「お兄ちゃんのラグビーの方に行っていいよ。」
と言いました。しかし、母は、こっそり私の応援に来てくれました。兄のラグビーだけではなく、私の卓球も見に来てくれてうれしかったです。このときは、残念ながら負けてしまったけれど、次は、勝ったところを見てもらえるように頑張ります。
 卓球は、個人戦と団体戦があります。流行語大賞となったラグビーの「ONE TEAM」という言葉、チームのために全員で戦うという意味のこの言葉は、卓球の団体戦でも通じるものがあります。団体戦は、「ONE TEAM」で団結して勝利したいです。
 それから、まだ見に行ったことのなかった兄のラグビーの試合も応援に行きたいと思っています。きっと前とは違う気持ちで応援できると思います。

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