2017年度 第53回 受賞作品
RKB毎日放送賞
人助け
久留米市立 田主丸中学校3年綾部 亜美
もし、道に人が倒れていたら、あなたならどうしますか。この問いに対しては、ほとんどの人は、
「助ける。」
と答えると思います。しかし、ただ助けるといっても、実際に何をすれば良いかやどんな声をかければ良いかまで分かる人、落ち着いて声をかけることができる人はきっと少ないはずです。私は、正しい対応ができる人はかっこいいなと感じます。また、正しい対応というわけではなくても、堂々と接することができたり、やわらかい雰囲気をもって接することができたりする人を尊敬します。それは、昨年の夏にあった出来事がきっかけで、それができるというのはすごいことなんだなと思うようになったからです。
昨年の夏、私はいつものように部活動を終えて、友だちと自転車で帰っていました。その日は、雨が降っていたけれど、カッパを着るのが面倒臭くてトレーニングシャツのままで帰ったことを覚えています。
そんな雨の日の中、私は人が倒れているのを見つけました。そのときは本当にパニックになりました。何をしたら良いかはわからなかったけれど、とりあえず安否の確認をしようと、声をかけました。もし、この人が本当に亡くなっていたらどうしようと思うくらい、その人は声も出さず、ピクリとも動いていませんでした。
恐る恐る近づいていき、ようやくその人が男性だということがわかりました。
「大丈夫ですか。」
と声をかけると、少しうなるような声が聞こえました。そのとき、男性に意識があることがわかりほっとしました。しかし、何か病気かもしれない、ケガをしているかもしれないと思い、また、張りつめた空気になりました。このままの状態だと話も聞けないし、苦しいだろうと、抱き起こそうとしたけれど、なかなか上手くいきませんでした。小柄な方だったし、私たちは三人もいたので大丈夫だろうと思っていたけれど、予想以上に重かったです。雨の影響で服が水を含んで重くなり、男性は脱力していたのでとても起こしづらく、まったく抱き起こせそうにありませんでした。また、体に近づいたとき、強いアルコールの臭いがしました。ケガもなさそうだし、きっと酒に酔い、転んだのだと思われるので、病気でもないようで、私たち三人の間に流れていた、張りつめた空気が少し和らぎました。
でも、きちんと受け答えはできそうだけど何を聞いてもはっきり答えてくれず、どうしようかと考えていると、一組の夫婦と、近くのお店の制服を着た女性が駆け寄ってきました。夫婦の方が助けを呼んできたようで、状況を確認すると、お店の女性だけ残り、助けてくれました。その女性は男性に近づくと、
「家はどこですか。」
など私たちには思い付かなかったような質問をして、男性もそれに対して答えていたのですごいなと思いました。
その女性のおかげで男性は無事に家に帰ることができました。私はそんな女性を見て、私もこのように対応できるような人になりたいなと憧れを抱きました。
私は、家に帰り、早速この話を母にしました。私が、
「あんな大人になれるやか。」
と聞くと、母は、
「どうやかね。そういうことができる人ってそんなにいないと思う。 難しいけんね。」
と答えました。それを聞いて私は、確かに大人でも難しいのかなと思いました。
今回、私たちが助けようとしている間、車はたくさん通っていました。しかし、皆こっちを見るだけで何かしてくれた人はいませんでした。それは、忙しいだろうし、仕方ないのかなと思っていましたが、私たちが男性に声をかける前に、その男性を見ていたけれど、何もしなかった人もいました。私はその人を見て、何で助けないんだろうと、悲しいような怒りのような何とも言えない感情になりました。今回は、ただ酔っていただけだから助けるのが遅くても助かったけれど、もし病気なのに助けなかったら大変なことになっていたかもしれません。それを考えたらぞっとします。そんなことがあったら罪悪感も後悔も残ると思うので、人のためにも自分のためにも私は助けたいです。また、大きなことではなくても人を助けられるような人間になりたいです。