2017年度 第53回 受賞作品
RKB毎日放送賞
「知らないあなた」へのおくり物
私立 明治学園小学校5年佐伯 怜依
二〇一七年の六月。フリーアナウンサーの小林麻央さんががんで亡くなりました。麻央さんは、生前少し心残りがあると言っていました。それは、ヘアドネーションができなかったことです。ヘアドネーションとは、がんなどの副作用でかみが抜けてしまった子どもたちへ、無償でかつらをつくって贈る活動のことです。
子ども用医療かつらは値段が高く買うことができない人も多いので、普通は帽子をかぶって過ごしている子どもたちが多いと聞いたことがあります。また、ヘアドネーションでつくるかつらはすべて人毛を使うため、現在二百人待ちだそうです。そして、そのかみの毛は長さ三十センチメートル以上で、約二十人分の毛が必要なのです。
私はその話を母から聞いたとき、かみの毛を寄付するには長さが足りなかったのですが、かみをのばして絶対に寄付したいと強く思いました。私はそれほど長くかみをのばしたことがこれまでなかったので、それから約一年半もの間何度も自分の気持ちと戦いました。かみをのばすと、毎日長いかみを洗ったり乾かしたりするのが大変で、かみを三つ編みに結ぶのも苦労しました。
二〇一八年の冬。ついに私のかみの長さは目標だった三十二センチメートルになりました。母が、
「もうそろそろいいんじゃない。」
と言ったので、お父さんにメジャーでかみの毛の長さを測ってもらいました。かみの毛の長さはじゅう分でした。
次は美容院探しです。母と一緒にインターネットでヘアドネーションの協力店を探しましたが、残念ながら予約が取れませんでした。自分の中で納得ができず再度調べてみると、自分で切ってヘアドネーションの団体に贈ることも可能であると知りました。
そして、私はついに家での断ぱつ式を決意しました。もちろん切るのは母です。まず、かみを丁寧に乾かしてから一・五センチメートル位の太さに束ね、輪ゴムでとめました。なぜ乾かすのかというと、湿っていると製作中にカビが生えることがあるからだそうです。次に、輪ゴムの一センチメートル位上の所にはさみを入れ、ジョキジョキと切り落としてもらいました。母は、はじめドキドキすると言っていましたが、切り始めるとあっという間でした。そして、切った毛束は密封されたビニルぶくろに入れて団体へゆう送しました。
このヘアドネーションはとても地味なことかもしれないけれど、がんの子ども達の役に立てるのだから素晴らしいことだと思いました。この活動を始めた人たちをとても尊敬しています。まだ、「ヘアドネーション」という言葉を聞いたことがない人に、この活動をもっと知ってもらいたいと思いました。