ホーム > 小・中学生作文コンクール > 過去の受賞作品

「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2019年度 第55回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

祖父のみかん

私立  久留米信愛中学校1年井手 慶子

 今年もみかんのおいしい季節がやってきた。私はこたつでみかんを食べるのが大好きだ。特に祖父の作ったみかんは、甘くておいしい。毎年、私はみかんが送られてくるこの季節を楽しみにしている。
 祖父の畑は、有明海が見えるとても見はらしのよい場所にある。みかんは、潮風が当たると甘くておいしいみかんになるそうだ。五月のゴールデンウィークのころに行くと、みかんの花のよい香りがする。祖父の住む町は、みかん畑にかこまれているので、この季節は町中がみかんの花の甘い香りに包まれる。私は、白くて小さなみかんの花をながめながら半年後、おいしいみかんになることを想像していた。
 そして、十一月になり、今年は、父といっしょにみかんの収穫の手伝いに行くことになった。みかんの収穫は、これまでも、何度か行ったことがある。小さいころは、チョキチョキとはさみを使うことや、祖母の作るお弁当を畑で食べることを楽しみに行っていて、お手伝いと呼べるほどではなかった。でも、最近は、祖父母もだんだん歳をとり、重いコンテナをかかえたり、長時間、みかんの収穫をしたりするのが大変になってきたので、近くの親せきに手伝ってもらっているということを聞いていた。そこで、ちょうど予定が空いていた私と父で、週末を使って、収穫の手伝いに行くことにした。
 その日は、朝からとても良い天気だった。畑に着くと、おいしそうに色づいたみかんが、「早く収穫してよ」と言っているようだった。私は、軍手をつけ、みかんを入れる首からかける袋を下げ、はさみを持った。以前、祖父から教えてもらったように、みかんのヘタを短く切ることに気をつけながら、ひとつひとつ収穫していった。みかんのヘタを短く切るのは、他のみかんを傷つけないためだ。私は祖父が一生懸命育てたみかんだから、大切に扱わなければならないと思った。そのとき、私はふと思った。
「みかんの花が咲いたあと、このみかんが実を付けるまでどんなことをしているのだろう。」いつも同じ時期にしか、みかんを見ないので、その期間のことを私は全く知らないということに気付いた。私は、その日の夜、祖父に聞いてみることにした。私が、
「みかんを収穫するまでの間、どんな作業をしているの。」
と尋ねると、祖父は、嬉しそうに説明してくれた。
 みかんの栽培は、一年を通して、いろいろな仕事をするのだそうだ。いらない枝を切り落とすせん定や、木に栄養がいくように雑草を取ったり、季節ごとに肥料を与えたりといった作業だ。あのよい香りのみかんの花は、多すぎると大きなみかんができないので、無駄な花をつみとるそうだ。花が散った後、七月ごろからは大きすぎたり、小さすぎたり、傷のある実を取り除く「摘果」という作業がある。暑い中、ひとつひとつ手で取り除くのは、本当に大変だろうと思う。そして、みかんを病気や害虫から守るために年に七、八回、薬の散布もするそうだ。
 そういえば、私が祖父の家に遊びに行ったときはいつも、朝早くから祖父は畑に行っていて、いないということを思い出した。こんなにたくさんの手間と時間をかけて、あの甘くておいしいみかんができていたのだ。私はそのことを全く知らなかった。私は、祖父から、初めてこのみかんの栽培についての話を聞いて、いつも何気なく当たり前のように食べていたみかんをもっと感謝して食べなければと思った。
 次の日、私は、収穫したばかりのみかんをたくさんおみやげにもらって帰った。帰ってから、私は早速、母と妹に祖父から聞いた話をした。いつものようにこたつでみかんを食べながら、祖父母の顔を思い浮かべると、なんだか今年のみかんは特別おいしいように思えた。
 今、みかん農家は、後継者不足が問題になっているそうだ。今は元気な祖父母も「あと何年みかん作りができるだろう」ということを話していた。このおいしいみかんは、ずっと食べられるわけではないかもしれないと思うと、とてもさびしい思いがした。
 来年は収穫だけでなく、もっと、みかんの手伝いに行きたいと思った。

ページ上へ