2019年度 第55回 受賞作品
全共連福岡県本部運営委員会会長賞
もう一つの家にありがとうをこめて
福岡市立 香椎東小学校6年月守 望友
「ただいま!」
私には家に帰る前にもう一つ帰る家がある。その家とは、0才から通っている保育園だ。保育園では色々な事を学んだ。私が中学生になっても高校生になっても、ずっとあると思っていたもう一つの家は、この春、三月をもって閉園することになってしまった。なぜ閉園になってしまうのか。それは園長先生が重い病気になってしまったからだ。
園長先生は病気が分かる前から体調が悪そうだった。
「先生、病院に行ってきて。」
と言っても園長先生は、
「大丈夫、気にしないで。」
と、いつものような笑顔で言うばかり。それでも時折お腹が痛いといっていたので、私はとても心配だった。
私たちの夏休みに入ったある日、園長先生はやっと、大学病院に検査を受けに行った。
検査結果は、あまりよくなかった。いや相当よくなかった。私は、その検査結果を聞いた時、とても悲しくて涙がこぼれそうだった。なんで園長先生が病気にならないといけないの!?あんなに一生懸命毎日働いて子供達のお世話をしてくれている先生がと思うと、悔しかった。
病院での検査後、園長先生はだんだん保育園にも来なくなった。そして保育園最後の運動会も、少しだけでも出席しようと思っていたようだったが、やはり出席することができなかった。私は園長先生に少しでも運動会に行った気分にさせてあげたくて、メールで写真を送ってあげると、園長先生から、
「ありがとう、とってもうれしかったよ!」と返事が来た。その「ありがとう」の五文字を見て、なんだか私までうれしくなった。
私はもっと園長先生に元気になってほしくて、もう一人の先生と「千羽鶴」を折ることにした。千羽鶴の意味は「たくさんの良いことがありますように」という願いや「早く元気になりますように」という想いがある。もう一人の先生と私と私の家族で千羽鶴作りにぼっとうした。クリスマスにプレゼントとしてあげたくて一羽一羽、気持ちをこめて千羽折り続けた。
その間にも園長先生の体調は悪くなり手術をした。でも私達の千羽鶴にこめた想いがとどいたのか、園長先生は年末に少し回復して、家族と年末年始を過ごす事ができた。気持ちって届くんだなと胸があつくなった。
三月をもって閉園することになったもう一つの家。私が十二年間色々な事をたくさん学んだ場所。三月三十一日には、園長先生と共に一緒に園舎に「ありがとう」を言えるといいな。春の陽ざしの中で、みんなが笑顔で。
「もう一つの家にありがとうをこめて」