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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2019年度 第55回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

「ふくつのほそ道」

福津市立  福間中学校3年永瀨 翔絵

 私たちは、松尾芭蕉が見ていた景色をこれからも見続けることはできるのでしょうか。
 私は国語の時間に松尾芭蕉が書いた『おくのほそ道』を習いました。そこには芭蕉が平泉を見て感じたことが書かれてあり、とても共感できました。それは、先人の住居や人工物が田野や跡地になって姿を消しているのに対して、金鶏山や北上川、衣川などはそのままで残っているというところです。芭蕉は、時の流れの中で人間の営みははかないけれど、自然はそのままのかたちで残っていくということを感じたのです。今日の地球環境。果たして、私たちはその自然を残していくことができるのでしょうか。
 福津市には海岸沿いに松林があります。私はその松林がとても好きです。夏には風の通り道に、冬には木のあたたかさがあふれる場所になります。私は悩んだり、落ち込んだりしたときには必ずそこに行きます。すると、松林のゆったりとした時間の中で、モヤモヤした気持ちが松に吸収されるかのようになくなり、新鮮な気持ちになることができます。だから、松林は私にとって、とても大切な場所です。そして、松林は福津市にとっても大切な場所であるということができます。松林は海浜の砂や潮風による塩害から福津市を守ってくれています。つまり、福津の宝です。
 この福津の宝を永遠に残していくために、福津市では月に二度松林清掃ボランティアが行われており、福中生もその活動に参加しています。地域の方と色々なことを話しながら行う松林清掃は楽しいものであり、松林にとって、とても大切なものです。私は松林清掃のような地域貢献活動を誇りに思うとともに、今ある福津の自然環境が市民の手によって保全され、永遠に残ることを願います。
 九月二十八日に福間中学校で第一回未来会議が行われました。そこで、三年生と地域の方が六つのテーマに分かれ、SDGsに沿って福津の未来について語り合いました。私はその中の「日本一食品ロスが少ないまちにする」というテーマについて話し合いました。
 現在、食品ロスは世界的な問題になっており、食料廃棄の際には中国・アメリカに次いで多くの二酸化炭素が排出されています。このように自然環境に悪影響を与える食品ロスが多くなると、福津市のきれいな松林を保つことも難しくなっていくことでしょう。
 そこで、私たちはどうすれば課題を解決することができるのか、そのためには何が必要なのか、私たちにできることは何かというように少しずつ身近な話をしていきました。
 私たちの班では松林の保全などのボランティア活動を今後も続けていくこと、食品ロスを減らすという意識を一人でも多くの人がもつこと、この二つが最も大切であると考えました。その意識を高めるために私たちはポスターや標語をつくることができます。
 後日、福津市の統計資料をもとに提言書を書き、原崎市長に提出しました。地球環境が悪化し続ける中、この未来会議という新しいことが福津市から始まり、私たち自身も環境問題解決に貢献できたら、と意識しはじめました。「よりよい未来」をつくる上で大切なこと、それは、ひとりひとりが未来を想って意識することだと思います。
 『おくのほそ道』では、人がつくってきたもののほとんどが姿を消してしまいました。
 しかし、光堂は今もなお残っています。それは、人々が手を入れて残そうと努力したからです。また、『おくのほそ道』という作品自体も、人々に語られて芭蕉の思いを残すことができました。
 だから、私は未来を想う気持ちさえもっていれば、過去から引き継がれた自然環境や人々の思いを残していけるのではないかと思います。そう考えると、今を生きる私たちは、過去から未来への橋渡しをする存在なのではないでしょうか。
 私は、三月をもって中学校を卒業します。中学校で行ってきたたくさんの地域貢献活動を引き継いでほしいと願っています。特に未来会議を中心に積極的に福津市の「未来」について考え活動する中学生が、いてくれること、ひとりひとりが福津市を知り、愛して、「未来像」を描いてくれることを願っています。
 私自身、高校生になっても、その後、年を重ねていっても福津市を想う気持ちは忘れずにいたいと思います。それが今を生きる私たちの使命だからです。このように、私たちは想いと時を重ねて『おくのほそ道』に負けない『ふくつのほそ道』をつくることができるのではないでしょうか。

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