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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2019年度 第55回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

どんなに小さいウソでも

糸島市立  福吉中学校1年宮﨑 さくら

 「約束ね。」
 そう言って、母は私に真新しいタブレットを渡した。
 私の家では、高校生になってからでないとスマホを買ってもらえないルールになっていた。だから、タブレットを渡されたときはとても嬉しかった。しかし、その分、母と結んだ約束を守れるのか少し心配だった。母と結んだ約束とは、使い過ぎないことと、勝手にラインの友達を追加しないこと、だったのだが。タブレットをもらった翌日から、私は初めてのタブレットを、夢中になって触っていた。朝起きて学校に行くまでと、学校から帰ってきて寝るまで、ずっとだ。テスト前も、触らないようにと決めていたのだが、やはり気が付くと触ってしまっている、ということが多くなっていた。時々、タブレットばかり触っている姿を母に見られて、没収されて、怒られることもあった。
 そんなある日、友達と近所のお祭りに行く予定だった私は、待ち合わせた場所から電車でお祭りの会場まで行き、出店を一緒に回って、思い出にたくさんの写真を友達のスマートフォンで撮った。駅に戻る途中、最後に一枚写真を撮った。私は、そういえば友達と遊びに行くのは初めてだなと思い、「記念に一枚、写真欲しいな。」とつぶやいた。すると、友達が、「写真送るけん、ライン教えてよ。」と言った。私は、一瞬、母との約束を思い出した。「勝手にラインの友達を追加しないこと。」ダメなことはダメだと思い、友達に、「勝手にラインの友達追加したらいかんことになっとるとって。ごめん。」と言った。だが、友達は、「そんなの、守らんでいいやん。」と言う。私はもう一度断った。それでも友達は、「さくらとラインしたい。いいやん後で言えば。」私は、その「後で言えばいい。」という言葉に流されてしまい、帰り道で、その友達とラインを交換し、勝手にラインの友達を追加してしまった。そのときは「後で言えばいい。」と言いながらも、内心、これがバレたら、確実にタブレットは没収されるなと思い、ハラハラしていた。毎日仕事で忙しい母は、夜は帰ってこず、その日は会わないまま一日を終えた。その翌日、私はもう「後で言う」ことをすっかり忘れてしまっていた。その翌日も翌々日も忘れたまま、どんどん月日が経っていった。
 そして、ある日、事件は起こった。その日の夜は、母が夜帰って来るのが早く、私は母と一緒に晩ご飯を食べていた。するとそこに私の妹が、タブレットを見ながら、こちらへ歩いてきた。私は、なんだろうと思って、妹に「どうした。」と聞いた。すると、妹が「Mっていう人からライン来とるけど。」と言った。私はその瞬間、やっと「後で言う」ことを忘れていることに気付き、それと同時に、このままでは勝手に友達を追加したとしてタブレットごと没収されてしまう、と焦った。そして私は、こんなウソをついてしまった。「それ、N先輩のことだよ。」N先輩とは、部活動の先輩で、部活動の先輩とラインをするのは部活動の予定を話せるようにと許可してくれていた。だから、こう言えば許してくれる、バレずに済むと思ってしまったのだ。だが、それは、逆効果だった。私のウソの言葉を聞いた母は、「勝手に、ラインの友達追加したでしょ。正直に言いなさい。」と私に言った。もう、これ以上ウソをつきたくない、と思った私は、正直に、「うん。ごめんなさい。」と答えた。すると、母は、私のために、こんなことを話し始めた。
 「お母さんは、怒っとるよ。さくらが約束を守らなかったことに対しても、もちろん怒っとるけど、もっと怒っとることは何に対してか、分かる? それは、さくらがウソをついたことに対してだよ。さくらにとって、お母さんについたウソは、すごく小さいことだったかもしれないけど、どんなに小さいウソでも、一つついてしまったら、誰からも信用されなくなるとよ。分かった。」私の目からは、いつの間にか、涙が溢れ出ていた。なぜ泣いたのかは、自分でもあまり分からなかったけれど、私は、母が言った言葉が今でもずっと心に残っている。特に、「どんなに小さいウソでも、一つついてしまったら、誰からも信用されなくなる。」という言葉だ。この日から、私は少し変わった。母とは、正直に何でも話せる仲になれた。また、タブレットは、没収はされたものの、タブレットを触る時間が減った分、家族と話したり、放課後に友達と外へ遊びに行ったりすることが増えたのだ。
 私は、これからも、ウソをつきそうになるたびに、きっと思い出すんだと思う。「どんなに小さいウソでも、一つついてしまえば、相手を傷つけて、色々な人達からの信用を失う。」ということを。

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