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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2019年度 第55回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

おじいちゃんのリュックサック

福岡市立  田島小学校4年尾方 芙由

 おじいちゃんのリュックサックは、大きくていろいろなものが入る。大好きな本やはい句のノート、私があげたカエルのお守りも。いつもそれを背おい、散歩へ出かけたり私たちに会いに来てくれたりした。今日は、私たちがおじいちゃんの家へ行く日だ。
「芙由ちゃん、よく来たねえ。」
おじいちゃんはいつもの笑顔でむかえてくれて、ほっとした。中へ入ると、おじいちゃんのリュックサックが小さく折りたたんで、ぽつんと置かれていることに気づいた。おじいちゃんはこの一年、体調をくずし、入退院をくり返していた。さびしそうなリュックサックをじっとながめていると、
「おじいちゃん、この前おつかいに行ったら、リュックサックが空っぽのまま帰ってきたんよ。」
おばあちゃんが笑いながら言った。おじいちゃんは少し気まずそうに笑った。
 夕方、みんなでご飯を食べに出かけた。玄関でおじいちゃんがリュックサックを背おうすがたを久しぶりに見た。
「おいしかったね。」
帰りにおじいちゃんに話しかけると、
「何を食べたかね。」
と、返ってきて私はおどろいた。
「いつもこんな感じなんよ。」
おばあちゃんは静かに言った。けれど、おじいちゃんは変わらずいつもの笑顔だった。その時私は、おじいちゃんがどこで何をしたのかを全く思い出せないことを知った。むねがザワザワとさわぎ出した。私は立ち止まり、ペタンコになったおじいちゃんのリュックサックをしばらくじっと見つめていた。
 私は考えた。きっとおじいちゃんの背おうリュックサックは、今まで生きてきた思い出でいっぱいで、これ以上は入り切れないのだ。おじいちゃんがいろいろ忘れていくのは、もっと私たちと歩くために、荷物をへらして歩きやすくしているにちがいない。
「おじいちゃん。これからはリュックサックにたくさんの笑 顔をつめて、私たちと一緒に歩いていこうね。」
星空の下、ゆっくり歩くおじいちゃんの背中にそう願った。

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