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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2019年度 第55回 受賞作品

福岡県知事賞

八年前に込められた想い

福岡市立  金山小学校5年田中 結翔

「これで幼稚園頑張れるかな。」
「うん。泣いても頑張る。」
ちょっと大きめのエプロンを付けた弟は、笑顔満点で答えてくれた。
 今、ぼくの弟は、毎週金曜日だけ幼稚園に通っている。でも幼稚園が苦手のようで、毎朝、今日が何曜日かを確認し、金曜日の朝は必ず、
「幼稚園、いかんー。」
と、泣き叫びながら、お母さんからつかまらないように、全速力で家の中を逃げ回っている。しかし、今度の四月からは毎日幼稚園に通わないといけない。
 そんな中、冬休みの家庭科の宿題で、何をしようか迷っていたぼくは、弟が幼稚園で使うエプロンを作ることにした。
 まずは生地。ぼくは、キャプテン翼のメンバーがたくさんプリントされた、青い生地を選んだ。キャプテン翼は、家族みんなでよく一緒に見たアニメだ。弟は日向が大好きで、
「結翔、みさきね。えいすけ、翼ね。ぼくは日向で、お父さんあねご。お母さんはお留守番ね。」
この弟の決まり文句を聞く度に、みんなでよく笑った。思い出すだけで家族の笑顔がうかんでくる。
 次はいよいよミシン。型紙通りに切った生地にアイロンをかけ、ミシンでぬい始めた。その途中、お母さんが声をかけてきた。
「ここにはゴムを入れてね。首の部分がのびると、そうたが一人で脱ぎ着出来るけん。」
ぼくは、弟が幼稚園で困らないようにという、お母さんの心配りに感心した。
 ふと、ぼくは思い出した。
「今ぼくが、はしとナフキン入れに使っとる給食袋、あれ、お母さんが作ったんよね。」
「そうそう、電車のやつね。結翔が幼稚園に入園する時に作ったんよ。お弁当入れるけん、結翔でも出し入れしやすいように、口が大きく広がる工夫をしたんよ。」
七年間も使って、今まで全く気付かなかったが、後でこっそり確認すると、本当に電車の柄だった。初めて話した言葉が「電車」、なるほど、電車が大好きだったぼくのために選んでくれたのだろう。やけに大きな給食袋だと思っていたけれど、それも納得できた。
 そうこうしながら出来上がったエプロンを手に、ぼくは想った。
「これで弟が、幼稚園に泣かずに楽しく行けるといいな。」
そして、その想いと同時に、これは、八年前、お母さんがぼくの給食袋に込めた想いと一緒なのかもしれないと感じた。
 お母さんありがとう。気付くのがおそくなったけれど、おかげでぼくの幼稚園生活は、とても楽しかったよ。

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