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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2018年度 第54回 受賞作品

RKB毎日放送賞

正直さのねだんは三千円

福岡市立  平尾小学校5年佐々木 咲綾

「あれ、おつりが多すぎないかな。」
 今日は、おばあちゃんの誕生日。おばあちゃんの家にケーキや花束を持って行き、ピザを取ってお祝いすることになっていた。ピザが届き、おつりを受け取ったお母さんが不思議そうにつぶやいたのだった。
 聞けば、六千五百円分を注文し、一万円から支払ったが、六千五百円もおつりがきたそうだ。
「えっ。」
と、私とおじいちゃん、おばあちゃんがいっせいに大きな声をあげた。
「三千円もおつりを多くもらっているよ。」
私が一番に言った。でも、この三千円をどうしたらよいかすぐには分からなかった。
「三千円もおつりを多くもらえて、得したな。」と、お母さんがほくほく顔で言った。
「届けてくれたお兄さん、きっと店長さんから怒られるよ。気の毒だから、教えようよ。」
と、おばあちゃん。
「信用の問題だから、お店に教えてあげた方がいいよ。」
と、おじいちゃん。
 私はみんなの話を聞きながら、ふと、道徳のお話にあった日本人の正直さが素晴らしいことについて思い出し、お母さんに話した。
「お母さん、こんな話を知ってるかな。外国の人が日本で買い物をして、おつりを受け取らずにお店を出ちゃったの。そしたら、お店の人は、そのお客さんをあちこち探しておつりを届けたんだって。でも、おつりは、たったの一円だったんだよ。」
私は、続けた。
「たった一円でも、きちんとおつりを届けてくれる日本人は、正直で素晴らしいって外国の人は、感動したらしいよ。」
私は、さらに続けて、
「その三千円、お店に教えてあげようよ。」
と、きっぱりお母さんに言った。お母さんは少し考えてうなずき、そしてにっこり笑ってお店に電話をした。
 少しすると、さっきピザを届けてくれたお兄さんが、とびきりの笑顔と、ほっと安心した様な表情を浮かべてやってきた。そして、何度もお礼を言って、三千円を受け取り、帰って行った。
 おばあちゃんの誕生日会は、みんなすっきりした気持ちで過ごせ、ピザもいつもよりもずっとおいしく感じた。
 その日の夜、お母さんは私に、
「咲綾が人間として、信じられる正直な人に育ってくれてうれしいよ。」
と、話してくれた。私は、
「ただ、正直に言っただけだよ。」
と、布団にもぐりこみながら答えた。温かい気持ちでねむれた夜だった。

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