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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2018年度 第54回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

おじいちゃんのいない畑

福岡市立  老司中学校1年宮元 香菜子

 鹿児島に住んでいる祖母から荷物が届いた。ダンボール箱の中には、祖父が畑で作った野菜が入っている。いつもの定期便だ。
 私は、ダンボール箱の中から新聞紙にくるまった野菜を取り出した。
「あれ?」
私はなんだかいつもと違うような気がした。
「いつものニンジンよりすごく小さい?」
そう思いながら他の野菜を見ると、大根の形が不格好だったり、ジャガイモがいつもより小さかったりしたような気がした。
 その日の夜、祖母にお礼の電話をした。祖母は、
「野菜が小さかったでしょ。」
と笑って言った。そして私が、
「うん、ニンジンは十センチくらいしかないのもあったよ。」
と言った。祖母は
「野菜を作るには、雑草を抜いたり、密集して生えた野菜を間引きしたりしないと大きくていい野菜はできないからね。」
と言った。
 そう。それを毎日のようにやっていたのは祖父だった。祖父は少し前に軽い脳梗塞になってしまって、今は入院している。早くに病気が見つかったから、症状は軽かったみたいだけれど、右足が上がらなくなってしまったから、歩くのが難しいそうだ。
祖父は、
「たいしたことないから大丈夫だよ。」
と言っているけれど、リハビリはまだまだ時間がかかりそうで、入院が続いている。
 届いた野菜を見ていると、母が
「いつもおじいちゃんが、どれだけ大切に野菜を育てていたかが伝わってくるね。」
と言った。私は、
「うん。いままでこんなに小さな野菜が入っていたことはなかったもんね。」
と言った。祖母も
「おじいちゃんは、畑に行けないから野菜のことが気になって仕方ないみたいよ。見舞いに来るよりも、畑に行って雑草を抜いて畑の面倒を見てよ、っておばあちゃんに言うのよ。」
と笑って言っていた。
 今回届いた野菜は、祖母と鹿児島にいる小学生のいとこが収穫してくれたものだった。祖母は、
「これでも、収穫できた中で大きいものを選んで送ったんだけどねぇ。」
と言っていた。祖父は、この収穫された野菜を見たらどう思うだろう。
「自分が手をかけてあげられなかったから、いつものような立派な野菜に育たなかった。」と残念がるのかな。
 祖父は、早く畑に行きたいからとリハビリを頑張りすぎてしまい、病院の先生に注意されることもあると、祖母から聞いた。
 祖父の畑は、山の上にあって、がたがたした道ばかりで普通に歩くのも大変なところだ。しっかり歩けるように足を治さないと畑で作業をするのは無理だろう。
 私は、今まで祖父から野菜が届いても、それは当たり前のことだと思っていた。でも、そうではなかった。私たちに食べさせるために、喜んでもらうために毎日、畑の作業を休まず頑張っていたことが伝わってきた。野菜も手間をかけないと育たないのだ。
 私は、祖父がいない畑を想像してみた。
「さびしいな。」
と、私は思った。手間をかけてもらっていない畑の野菜たちも、祖父が来るのを今か今かと待っていることだろう。
 祖父には無理はしてほしくないけれど、リハビリを頑張って早く前のように歩けるようになってほしい。そして、畑で作業をしている元気な祖父の姿が見たいと思った。
 今の祖父の目標は、
「野菜の種まきをする春までに、畑に行けるようにしっかりリハビリを頑張って足を治すこと。」
と、祖母が言っていた。
 私は、祖父にこう伝えたい。
「おじいちゃん、おじいちゃんの作った立派な野菜が届くのをいつまでも待ってるよ。おじいちゃんが作ったおいしい野菜で料理を作って食べられるのを楽しみにしているよ。」
と。そして、
「病気を治して、早く元気に歩けるように、がんばれ、おじいちゃん。」
と。

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