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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2018年度 第54回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

強く、かっこよく

福岡市立  平尾小学校4年綾田 樹元

 ぼくは、左手のこうのきずを見て思う。初めてクロに出会った時のこと。
「おいで。」
と出した手を、クロがバリバリッと引っかいたのだ。びっくりした。ねこに引っかかれたのは初めてだったから。
「きらわれたのかな。」
ぼくは悲しい気持ちになった。
 でも、今はそうじゃないと分かっている。このクロというねこはおじいちゃんによると、よそのねこからこの家を守ってきたらしいのだ。相手とけんかになって、きずだらけになってもよそ者をおっぱらってきた、ゆうかんなねこなのだ。だから、ぼくを引っかいたのはよそ者だと思ったからだろう。
 ある夜、クロは二階のまどから外のねことけんかをしていた。こうふんしたクロは、二階のまどから外へ飛び下りてしまった。ギギギギギとまどを開ける音。ガリガリガリと木にぶつかって落ちる音。ウウウウバリバリとあばれる音。ぼくはあまりのさわぎに家を飛び出してクロの名前をよんだけど、かい中電灯の先にクロはいなかった。
 次の日の朝、さわぎの本人はすずしげな顔でごはんを食べていた。このクールさもかっこいい。なにかあるとすぐに弱気になるぼくは、こんな風に強く生きるクロにとてもあこがれている。のこぎりのようにギザギザの耳。おでこにできた半月の形のきず。どのきずもクロがたくましく生きているしょうこだ。おっちょこちょいでできたぼくのたくさんのきずとは全然ちがうように思える。
「クロ、クロちゃん。」
 最初はふり向きもしなかったクールなおさわがせ者が、最近はふり向いてゆっくりと来てくれるようになった。気が向くと、ぼくの手に頭をこすりつけてあまえてくれる。でもゆだんをすると、初めての時のようにガリガリッと引っかかれてしまう。この左手のきずもそうだ。
 それでも、クロは、ぼくのあこがれだ。だれにでも心をゆるさず、よそ者から家を守り、全力で戦うすがた。そして、終わったけんかは引きずらない。
 つまらないけんかできずつけあっている人間なんかよりかっこいいと思う。ぼくも強くかっこよくありたい。

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