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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2018年度 第54回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

祖父の百才の家

福岡市立  若久小学校5年上坂 壮史

 小さくひなびた温泉街に建っている古くて大きな木造の家。ぼくの祖父の家だ。建てられてから百年以上という長い時間が経っているというのに、まだどっしりとその同じ場所で街の変化を見続けている。
 家の外側はさすがに少しばかりはリフォームをされているが、中に入ってみると、がっしりとした木の柱がいろいろなところで家を力強く支えている。四角に加工された普通の柱ももちろんあるが、木をそのままの形で丸ごと一本使っている柱に目をひかれる。丸ごと一本の柱の中でも大きいものは、ぼくの手をまわしてやっととどくぐらいだ。そんな太い木が大事な場所をしっかりと支えているから、この家は百年以上経ってもがんじょうなのだ。
 その柱の中でも、ぼくが一番気に入っている柱は、桜の木の柱だ。大きくて、こい茶色のその桜の木の柱を見ていると、おだやかで落ち着いた気持ちになる。そして、この家が建てられた時代では、どのようにして木を運んだり、木を加工したり、家を建てたりしていたのか知りたくなる。
 みんなで木をかついで運んだのだろうか。まっすぐでがんじょうな木を育てるために、今と同じように、枝打ちをしたり間ばつをしたりしていたのだろうか。木の加工方法は、今と同じだったのだろうか。家を建てるために、どのくらいの人が関わり、どのくらいの時間がかかったのだろうか。このたった一本の桜の木の柱をながめているだけで、ぼくの想像はどんどんかきたてられる。きっと、この家を建てるために、たくさんの人の思いがこめられていたのだろう。
 祖父の家に遊びに行くといつも、祖母が柱にぼくと弟のせの高さのところで印をつけて、ぼく達の成長を記録してくれる。ぼくの家は父が転きんをするので、柱に印をつけることができない。そのこともあって、ぼくはひそかにこの儀式を楽しみにしている。祖父が生まれる前から建つ家に、ぼく達の成長がきざまれているということは、この家の歴史にぼく達も加わっているということだ。柱の印を見る度に、このことが感じられて、ぼくはうれしいようなほこらしいような不思議な気持ちになる。
 ぼくの祖父の祖父も住んでいた家。戦争中の悲しく暗い街の様子を見てきた家。祖父や母の子どものころを知っている家。台風や大地しんなどの災害から家族を守ってきた家。祖父の家は、たくさんの柱が力を合わせて祖父の家族を守り、見守ってくれている。
 今までぼく達を見守ってくれた祖父の家に、これからもずっと見守ってもらえるように、百年後の世界も見てもらえるように、大切にしていきたいと思う。
 ぼくの未来の家族のためにも。

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