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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2018年度 第54回 受賞作品

福岡県知事賞

ああ、人生

国立大学法人   福岡教育大学附属福岡小学校4年大ほ 咲季

 平成最後の秋、大正生まれのひいおばあちゃんが、九十五才で天国に旅立った。ひいおばあちゃんは、わたしをとてもかわいがってくれて、部屋中あちこちに、わたしがかいた絵をかざっていた。そんなひいおばあちゃんの部屋を、お母さんとかた付けていたとき、
「わあ、なつかしいものがでてきたよ。」
と、お母さんが一さつの本を持ってきた。表紙には『平成七年度作文集』と書いてあり、しおりがはさんであった。何だろう、とわくわくした気持ちをおさえきれず、そのページを開いた。
「『ああ、人生』あ、お母さんの作文。」
思わず顔を上げると、お母さんはなつかしそうな笑顔でうなずいた。
「ひいおばあちゃん達の結こん五十年の会の作文よ。大切にしてたんだね。」
わたしは内ようが気になって、かた付けの手を止めて読んでみることにした。
 作文の中には、二十三年前のお母さん達がいた。目の前にごちそうがならんでいるのに、ひいおじいちゃんのあいさつが長くて、お母さんのおなかがなりそうでこまったこと。その横でひいおばあちゃんが、「長すぎ」と目で合図してはらはらしていたこと。がんこなひいおじいちゃんが、初めてみんなの前でひいおばあちゃんに感しゃを伝え、なみだを流したこと。ごちそうのにおいや話し声がするようで、わたしはタイムスリップした気分でいると、
「ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんは、せいかくが真反対でね。けんかも多くて、わたしも心配してたの。でも、おたがい足りないところを支え合いながら、五十年の人生を歩いてきたのだと感じて、作文にしたの。」
と、お母さんが教えてくれた。
 わたしは、はっとした。わたしが当たり前のように生きてきた十年の人生は、家族や友達、多くの人に支えられて歩いてきたのだ。これはひいおばあちゃんからのメッセージだと思った。これからの人生、楽しいことばかりではないだろう。しかし、周りの人に支えられ、そしてわたしも支えになり、すてきな人生にしていきたい。
「天国から見守っていてね。」
わたしの絵いっぱいのひいおばあちゃんの部屋でつぶやき、そっと本をとじた。

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