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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2018年度 第54回 受賞作品

福岡県知事賞

二人きりの時間

福岡市立  玉川小学校3年東 ゆきと

「ウィーン」
という音が耳もとで鳴りひびく。
「もう、動かんで。」
と、お母さんのみけんにしわがよる。
 ぼくのお母さんは、ぼくたち三兄弟を育てるパワフルなお母さんだ。仕事や家事にいつも大いそがし。
 そんなお母さんが、ぼくたちのかみがのびてくると、バリカンでかみを切ってくれる。いつも決まって洗面台の前でバリカンを持ったお母さんがに王立ちをして、
「かみ切るよ。早よ来んね。」
と、ぼくをよぶ。その声を聞くと、「またかぁ。」と、だんだん暗い気持ちになってくる。なぜなら、かみ切りの間は、動くことが出来ないし、少しでも動くと、
「また動いた。」
と、しかられるからだ。そして、
「右向いて。頭下げて。」
と、そうさされているロボットのように、ぼくはお母さんの言うままに動かなければならない。だから、いやなんだ。
 でも、こんなことをぼくがもの心ついた時からずっとつづけている。かみを切られる間ぼくは、お母さんをじっと見つめている。さい近、お母さんのかみの毛にしらがを見つけた。「お母さんも年をとっているんだなぁ。」と、ふだんは気がつかないことに気がつく。
お母さんが、
「さい近学校どう。」
と、話しかけてくるのでぼくも学校のことや友だちのことを話す。ぼくとお母さんの二人きりの時間だ。
 この前は、お母さんがかみを切りながら、
「あと何年、ゆっきーのかみを切れるかなぁ。」
と、ぼそっとさびしそうに言っていた。ぼくも、「あと何年二人きりになれる時間がつづくかな。」と、なんだかさびしくなった。
 また、かみがのびてきた。そろそろお母さんと二人きりの時間。ちょっぴり楽しみだ。

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