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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2017年度 第53回 受賞作品

西日本新聞社賞

私を変えてくれた人

うきは市立  浮羽中学校1年中嶋 小鳳

 「……。おはようございます。」

 太陽の光が熱い朝も、冷たい風が吹く朝も、毎朝自転車に乗り、作業着のような服装をした外国の方を見る日が多くある。小学校のときと違い、自転車で登下校するようになった私は、中学校までの道のりは遠くなった。その外国の方は、一人だけというわけではなく、必ず何人も見るような気がする。

 私は、最近、社会の授業で「外国人労働者」のことについて学んだ。外国人労働者を雇う理由は、「安い賃金でたくさんの労働力を得られる」ということらしい。初めは、「外国の方々が少しのお金を支払うと、その仕事場で、たくさん働かせてもらうことができ、一生懸命働いた分だけお金をもらうということなのかな」という勘違いをしていた。しかし、本当のことを理解していくにつれ、心の中で、「同じ人間なのに……」と心がとても痛み、傷つき、ぐっとしめつけられ、針で突き刺されたような気持ちになった。そのとき、私はふとあの人たちのことが頭の中をよぎった。

 私は、吹奏楽部の朝練があるため朝早くに家を出る。暑い朝も、寒い朝も、真っ暗で朝を感じない日もあり、自転車で行くのは正直とてもいやになる。そして、坂や長い道のりで足がつかれきってしまう。しかし、中学校に少しずつ近づいていくにつれて今日の一日がどんな一日になるのか、いろいろな気持ちが高まり、ワクワクしている。

 そんな中、「んっ……」と首をかしげてしまう姿。外国の人でみんな同じ服をきている。私は、「あの人たち……」といつも思う。それはやはり「外国人労働者」のことだ。しかし、本当にあの人たちが外国人労働者なのかはわからない。ただ、「あの人たちが誰だから」や、「あの人たちが外国の人だから」など関係ない。私は、外国人の自転車に乗った男性のこの一言で太陽の光のように心が輝いた。

 「……。おはようございます。」

 少し、聞きとりにくい日本語だったが、私の心の中へ音楽のように、歌声のように響いてきた。そのとき、「言葉はこんなにあたたかいんだ」「こんなに心の奥深くまで届くんだ」と思い、私は心の中がとてもあたたかくなった。そして、言葉の大切さとあいさつのあたたかさを学んだ。

 世界の国々は、争いを起こすためにできたのではない。あいさつを交わし、協力して生きていくための存在だと思う。つまり、「あいさつ」とは国々の人が他の国々の人と手をつないで分かり合うための、あと少し、ほんの少し足りない間を助け、手を差しのばしてくれる大切なものなのかもしれない。

 私はこの日から外国の方とすれちがうたびに、自分から笑顔も忘れずに、

「おはようございます。」

と元気よくあいさつをするようにした。あいさつを返して下さる人、日本語がまだよくわからないのか、あいさつを返してくれない人もいる。「あっ……。ダメだったかな。」と少し不安になったときもあったが、必ず深く頭を下げ笑ってくれる。私は、笑顔であいさつをしてくれるのがうれしい。そして、その笑顔が大好きだ。

 最近、祖母が住んでいる三丁目の区で発行している「三丁目だより」をみた。この三丁目だよりというのは、区の住民の俳句や出来事が楽しく書いてあって、引っ越してきた方を歓迎するメッセージなどと、誰が見ても楽しめる区の新聞のようなものだ。その三枚目の一番下の方に「ベトナムからきた青年」と見だしがあり、その下に写真とコメントが少しのっていた。そこには、「ベトナムからきた青年です。あいさつはできますが、日本語はわからずジェスチャーで写真をとらせていただきました。あいさつを大きな声でしてくれるので、みなさんも笑顔であいさつしてみてくださいね。」と書かれていた。私はその言葉に、はっとなり、ぐっと背中をおされたような気がした。そして改めて、「あいさつ」って本当に人と人をつないでくれるものなんだと思った。

 あたたかいあいさつ。私は、誰に対しても大切で当たり前なことだと思う。これからも、笑顔で元気にあいさつをしていきたい。私もあのベトナムの青年のような人になりたい。世界中の人の心を私のあいさつであたためる。それが私の目標だ。そして、また明日もきっと会うだろう。私を変えてくれた人に。

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